日本の川に昔からすんでいる「サワガニ」。清流で出会える可愛らしい小型のカニです。
私たちの身近で暮らすサワガニですが、実は変わった生態を持つちょっと珍しいカニだということを知っていましたか?
そんなサワガニの魅力と不思議に迫ります。
サワガニってどんなカニ?
サワガニは日本の清流にすむ、まるまるとした体とちょこんとしたハサミが可愛らしいカニです。
赤~赤茶色の体にクリクリした目。川遊びをしていると、石の下からそっと現れて、慌てて逃げる小さな姿に、つい笑顔になってしまいます。
真っ赤な体で石の間を歩いている姿はこどもでも見つけやすく、清流では欠かせない遊び相手です。

昼間のサワガニはおとなしく見えますが、実はサワガニは夜行性。昼間は岩陰にひっそり隠れていて、暗くなるとせっせと活動を始めます。
食べ物は雑食性で、落ちた葉っぱを食べることもあれば、小さな虫をハサミでつまんで食べることも。清流の中の小さな掃除屋さんとして、自然の循環にもひっそりと貢献しているんです。
これからの季節、浅い清流でそっと石をひっくり返してみると、コソコソ動くサワガニに出会えるかもしれません。ただし、そっと優しく扱ってあげてくださいね。
ちなみに淡水で暮らすカニはカニ全体の2割程度しかおらず、実は珍しい存在なのです。
お母さんのお腹で赤ちゃんが育つ、珍しいカニ
サワガニの生態でもうひとつ驚きなのが、その「子育てスタイル」です。
多くのカニは卵から孵化するとプランクトンのような姿(ゾエア幼生)になり、海へ流されて成長します。ですが、サワガニはいきなり卵からカニの姿で生まれてきます。
メスはお腹の下に卵を抱え、川の中で孵化した子ガニをそのまま守り育てます。

このように大人と同じ姿で生まれてくるカニは一部の淡水生、陸生のカニに限られ、専門用語では「直達発生(ちょくたつはっせい)」と呼ばれます。
つまり、サワガニは親の近くで安全にカニの形に成長する、珍しいタイプの淡水カニ。初夏に出会える生まれたての小さなサワガニたちは、まるで親子で仲良く暮らしているようにも見えて、微笑ましい光景です。
そんな小さなサワガニを見つけたら、自然の中で育まれる命のつながりを、そっと観察してみてくださいね。
運が良ければ出会える? ごく稀に生まれる「青いサワガニ」

さらにサワガニには、ごく稀に「青い個体」が発生します。
通常は赤褐色や茶色のサワガニですが、全身が透き通るような青色に染まった個体が生まれることがあるのです。
これは突然変異による色素異常で、自然界ではとても目立つため、残念ながらなかなか生き延びることができません。
もしも川遊び中に青いサワガニを見つけたら、それはきっと特別な出会いです。ただ、珍しいからといって持ち帰らず、できれば自然の中でそっと見守ってあげてくださいね。
夏になったらサワガニに会いに行こう
サワガニは、身近な川に暮らしていながら、珍しい生態を持つ生き物。その可愛らしい姿、親子で生き抜くたくましさ、そして運が良ければ出会えるかもしれない青い個体──どれも魅力にあふれています。

最後に、毎年サワガニ観察をしている筆者の肌感によるサワガニ探しのアドバイスを少しだけ書いておきますね。
時間は午前中、水遊びシーズンににぎわう場所であればシーズンはじめがおすすめ。縄張りがあるのか、大きな石の下には大物がいる可能性大です。
清流がうれしい季節になったら、ぜひ石をそっとめくってサワガニを探しを楽しんでみてくださいね。小さな発見が、きっと忘れられない夏の思い出になりますよ。
(サカナトライター:halハルカ)