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実は世界中で人気の食材・カエル 美味しく食べられている<カエル料理>にはどんなものがある?

日本ではメジャーな食材とはいえないカエル。時々、海外の料理を提供する店などで見かけることがある程度です。

しかし、世界に目を向けるとびっくり! 意外にも多くの国でカエル料理が愛されているのです。

世界各地で親しまれているカエル料理にはどのようなものがあるのでしょうか。

ヨーロッパでカジュアルに楽しめるカエル料理

フランスでは、食用カエルの脚肉は「グルヌイユ(grenouille)」と呼ばれ、様々な料理に使われています。実はその歴史も長いのです。

ネイチャー・コンサベーションに掲載された論文(European Union Imports of Frog Legs: An Analysis of Trade Patterns and Ecological Implications)によると、フランスは1980年代、最大のカエル消費国でした。カエル脚肉の輸入量は1983年にピークを迎え、4522トンも消費されていたのだとか。

近年でもカエルはよく消費されており、2010年から2019年にかけて、フランスは約6790トンのカエル脚肉を輸入。単純計算で、1年あたり679トンの輸入があるということになります。

ウシガエル(提供:PhotoAC)

遡ると12世紀、肉食を制限された修道士がカエルを魚とみなして食べていたそう。それを見た農民たちは同じようにカエルを食べ始め、カエル食が広まっていたといいます。

カリッと揚げて、ガーリックやソースで味付けするスタイルが定番。ふっくら軽めで淡泊な食感は、ソテーやムニエルなど調理法によって多彩な変化を楽しめます。

また、有名なフランス人シェフであるオーギュスト・エスコフィエ氏はチャールズ皇太子を称える大夜会で、「Cuisses de Nymphe a l’Aurore(「夜明けのニンフの太もも)」というカエル料理を振舞いました。チキンゼリーで覆われたハーブ味の料理だったようですが、ぜひ一度は味わってみたいものですね。

イタリア北部でもカエルは伝統食材 ほか各国で消費

イタリアでも、カエルは北部を中心に食卓によく上る伝統食材です。稲作文化があるため、水田で手に入りやすいカエルが食べられるようになったと考えられます。

人気料理はリゾットで、ほどよい弾力の肉質と米は食感がベストマッチ! フリットシチューなども人気のようです。

ほかにもスペインやアルバニア、ルーマニアなど多くの地域でカエルが食材とされます。スロベニアやクロアチア、ウクライナの一部では、カエルの唐揚げが名物です。

なお、ヨーロッパで食べられるのはヨーロッパトノサマガエルという雑種のカエルですが、近年ではインドネシアなどから輸入したカエルが主流になりつつあります。

日本以外のアジア各国でも親しまれている

アジアにおいては、ウシガエルヌマガエルなどさまざまなカエルが食用にされます。

中でも中華料理では、特に広東料理や四川料理でカエルが使われ、養殖も盛んに行われています。

ヌマガエル(提供:PhotoAC)

調理方法は、揚げる、蒸す、炒める、煮込むなどヨーロッパに比べてかなり多彩です。

味も食感も鶏肉に近いとされるカエルは、中国語で「田の鶏」と呼ぶそう。柔らかいカエルの肉はどんな味付けとも調和するのです。

台湾・カエルのから揚げ(提供:うえの かのん)

四川料理の「カエルの火鍋」は、ぜひ味わいたい一品。辛いものを食べ慣れている四川の人々も身構える激辛料理で、見ただけで汗が噴き出しそうな真っ赤なスープと淡泊なカエルの白身は相性抜群!

インドネシアでもカエルは鍋や唐揚げにされ、さらになんとカエルの卵もバナナの葉に包んで蒸し焼きにされます。カエルの皮の揚げせんべいは、パリパリ食感がやみつきになるのだとか。

<アメリカ・ケイジャン文化>に基づくカエル料理

アメリカ南部はフランス系カナダ人に由来する「ケイジャン文化」が色濃く、よくカエルを食べます。

中でも、ウシガエルを唐揚げにして、ディップをつけるスタイルが主流。味は鶏肉、食感は魚に近く、味の濃いディップやスパイスによく合います。

一方、カリブ海のドミニカ共和国や英領モントセラトの郷土料理になくてはならない食材が、ナンベイウシガエルという巨大なカエル。例えばカリブ海一帯のソウルフード「カラルー(野菜煮込み)」などにも、これらの地域ではカエルを入れます。

ナンベイウシガエル(提供:PhotoAC)

ナンベイウシガエルも鶏肉とよく似た味とされ、現地では「マウンテンチキン」と呼ばれます。中国でもカリブ海でもカエルを「鶏」と表現するのが面白いですね!

また中米では、メキシコやエクアドルなどにもカエル食文化があります。

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浅川 千

浅川 千

転生するならマナティー希望

研究者を志して進学した大学で旅の魅力にとりつかれ、あれよあれよと脱線。サイエンスと人間文化の両面で自然の魅力を発信することが使命です。魚は見て楽しむべきか食べて楽しむべきか、それは永遠の課題……。

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