魚を食べることが好きな人であれば誰にでも、「一度は食べてみたい魚」というものがあると思います。
私が一度食べてみたかった魚の一つが「サツオミシマ」。この魚はミシマオコゼ科に属する大きな魚です。
【画像で見る】ブサカワな見た目が話題の魚!サツオミシマと同じミシマオコゼ科に属するミシマオコゼ
かれこれ10年ほど入手を切望していたサツオミシマだったのですが、ついに2025年8月の終わり、初めてこの大きなミシマオコゼ科魚類の入手が叶ったのでした。
どうしてもサツオミシマが欲しい理由
筆者はミシマオコゼ科の魚が特に好きで、これまでにもミシマオコゼ属のミシマオコゼ、ヤギミシマ、メガネウオ、キビレミシマ、カスリミシマ、そしてアオミシマ属のアオミシマを食べてきました。
なぜこの仲間が好きなのかというと、身がぷりぷりし、肝や胃を含めて美味しく食べることができるからです。
そんなミシマオコゼ科の魚の中でも、特に大きくなるのがサツオミシマ属のサツオミシマIchthyscopus pollicaris Vilasri, Ho, Kawai & Gomon, 2019で、大きいものでは全長50センチ近くにまでなります。
こんなに大きくなるなら美味しいに違いない、ぜひ食べてみたいと思い、購入を希望してきました。
サツオミシマの入手を切望する中、2025年8月の終わりのこと、ついにサツオミシマを購入することができたのです
これにより筆者は日本産のミシマオコゼ科魚類のうち、東シナ海にすむ稀種トウカイミシマを除く全ての種を入手が叶ったことになります。
大きなサツオミシマを観察してみる
我が家にやってきたサツオミシマをじっくり観察してみます。
今回のサツオミシマは長崎県で漁獲された個体です。漁法は不明ですが、ヒレが少し破れていたことから底曳網または刺網で漁獲されたものと推察できます。
サツオミシマ(提供:椎名まさと)大きなメスの個体(卵巣があったため)でその大きさは全長46.8センチ、標準体長35.6センチ、重さ3キロでした。もちろん我が家にやってきたミシマオコゼ科の中では規格外のサイズです。
サツオミシマのヒレを詳しく観察
サツオミシマがミシマオコゼ属の魚と大きく異なるのが背ビレです。
ミシマオコゼ属の魚は棘条からなる第1背ビレと、軟条からなる第2背鰭とに分かれています。触ると固く尖っているのが棘条で、やわらかく弾力性があるのが軟条です。
サツオミシマの背びれは分かれておらず、棘条のある部分と軟条のある部分は鰭膜(きまく)によってつながっています。
サツオミシマの背鰭棘(撮影:椎名まさと)なお、日本産のミシマオコゼ科魚類で背ビレがひとつだけの種としてはサツオミシマのほかにアオミシマが知られていますが、アオミシマの背ビレは軟条のみからなり、棘条がないことで見分けることが可能です。
また、本種は体側に大きな白い模様が入り、黒い点が見られません。この点でも、体側に細かい黒色斑点が多数入るアオミシマとの見分けることができます。
よくよく観察すると海での生活がみえてくる
ミシマオコゼ属の魚であれば鰓蓋後方に大きな擬鎖骨棘(ぎさこつきょく)があるのですが、このサツオミシマのそれは不明瞭で、そのかわり胸ビレの上方にヒラヒラとした大きな皮弁があります。
サツオミシマの鰓蓋付近(撮影:椎名まさと)同じように背ビレがひとつのアオミシマは、この皮弁も大きな棘もありません。この点でもサツオミシマとアオミシマは識別できそうです。
サツオミシマの変わった顔
サツオミシマは顔も変わっています。
口の周りは小さな毛のような皮弁が見られますが、恐らくいつもは砂中に潜りこの口と眼だけを露出させ、近づいてきた小魚を捕食するのでしょう。そして、そのために口の周りの皮弁が擬態に役立っているのだと思われます。
サツオミシマの頭部背面(撮影:椎名まさと)眼の周りにある白い斑点もカモフラージュに使われるものなのでしょう。
ミシマオコゼの仲間には、メガネウオのようにルアーをもち、それを使って獲物をおびき寄せて食べるような種や、新大陸のデンキミシマの仲間のように電気を出すものもいますが、このサツオミシマはそのようなことはせず待ち伏せてやってきた獲物を捕食するように思えます。
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