脊索と痕跡的な脊椎しか持たないヌタウナギは原始的な生物として知られています。
この生物は原始的な形質に加え、大量の粘液を分泌することが大きな特徴です。この粘液には細くて強靭なタンパク質が含まれていることから多くの研究者が関心を寄せています。
一方、ヌタウナギの粘液はその特徴から敬遠されることも少なくありません。では、もしこの物質が有効活用できるとしらたどうでしょうか。
ヌタウナギは原始的な生物
ヌタウナギは海洋に生息する生物です。
本種は原始的な脊索と呼ばれる構造と痕跡的な脊椎しか持たないことから、“原始的な生物”として知られこれまで様々な研究の対象とされてきました。最近の研究ではヌタウナギの寿命が50年を超えること、乱獲に対して脆弱である可能性が示唆されてます。
ヌタウナギの仲間(提供:PhotoAC)ヌタウナギを含め日本産のヌタウナギ科は2属8種が記録されており、その多くが深海性の種です。この中でも比較的浅い海に生息するヌタウナギは入手も容易であるため、一部の地域で食用となるほか研究の対象にもなります。
そんなヌタウナギですが、名前の通り「ぬた」を分泌する生物であり、この生態から本種を嫌煙する人も少なくありません。
ヌタウナギの「ぬた」
ヌタウナギは危険が迫ると粘液腺から粘液を大量に分泌し自らの身を守ります。この粘液はヌタウナギを調理する際にも厄介な物質であり、本種が扱いにくい存在とされる理由の1つと言えるでしょう。
一方、この粘液には細くて強靭なタンパク質が含まれていることから、多くの研究者が関心を寄せているそうです。
山形大学の研究グループもヌタウナギの粘液に着目しており、粘液に含まれるタンパク質を利用した研究を実施。そして「Soft Matter」に掲載された論文(Hydrogel Formation by Liquid–Solid Phase Transition of Hagfish Intermediate Filament Protein Condensates)では新規ゲル材料の創成に成功しています。
ゲル材料の創成に成功
研究では電解質や高分子の共存条件を調整することにより、ゲルを形成することに成功。このゲルは優れた生分解性と力学特性を備えていることが特徴です。
また、100パーセントバイオマス由来のバイオマテリアルとしての活躍が期待され、100パーセント自然に還る夢のような素材になる可能性を秘めているといいます。
ヌタウナギの産業化
現在、日本におけるヌタウナギの利用は限定的であり、養殖についても産業化が行われていません。
今後、ヌタウナギの粘液を利用したバイオマテリアルが実用化されることで、本種の新たな活用方法とそれに伴う、新たな産業の誕生が期待されています。
将来、ヌタウナギの養殖方法が確立されて、我々の生活を支えることになるかもしれませんね。
(サカナト編集部)