今年は「午(うま)年」ということで、名前に「ウマ」とつく魚もいます。
魚で名前に「ウマ」とつくものといえば、代表的なのがウマヅラハギ。そんなウマヅラハギにはそっくりさんがいるのです。
今回はウマヅラハギとそのそっくりさんの見分け方をまとめました。
ウマヅラハギとは
ウマヅラハギThamnaconus modestus(Gunther, 1877)はフグ目・カワハギ科・ウマヅラハギ属の魚です。
本種をふくむウマヅラハギ属はインド~太平洋域に生息していますが、このウマヅラハギの分布は日本沿岸およびその周辺に限られます(マレーシアなどからの記録もあるよう)。
そして日本であれば琉球列島をのぞく、ほぼすべての沿岸に生息しているとされています。
富山県のウマヅラハギ(提供:椎名まさと)名前の由来は頭部の形状から来ていると思われ、地方名も「うまたて」や「うまぬすっと」、「うまはげ」など、ウマにちなむものがよく知られています。
「はぎ」「はげ」は皮を剥いで食べることから、「ぬすっと」というのは釣りの際、エサだけ盗る名人でもあることからついたのかもしれません。
また、皮がざらざらしていることから富山県では「せんば」とも呼びます。これは北陸地方ではおろし金を「せんば」とよぶことから来ているようです。
ウマヅラハギのそっくりさん<キビレカワハギ>
ウマヅラハギには「そっくりさん」の魚がいます。それがキビレカワハギThamnaconus modestoides(Barnard, 1927)です。
キビレカワハギはウマヅラハギよりもやや南方系とされており、その分布は神奈川県三浦半島以南の太平洋岸、日本海西部、八丈島、小笠原諸島、五島列島、沖縄島にまでおよび、海外では西太平洋から南アフリカにまで見られ、ウマヅラハギよりも南方系が強いといえそうです。
高知県土佐湾のキビレカワハギ(提供:椎名まさと)私が初めてキビレカワハギを見たのが2011年の秋のこと。土佐湾で操業する沖合底曳網漁業によって漁獲された魚を発泡スチロールの箱ひとつぶん購入し、その中にこの魚が入っていたのでした。
最初は色が薄いウマヅラハギかと思いましたが、調べてみるとキビレカワハギであることがわかりました。
ウマヅラハギとキビレカワハギを見分ける
ウマヅラハギとキビレカワハギの見分け方としては、えら孔の位置で見分けるのが一番でしょう。
えら孔はキビレカワハギのほうが、ウマヅラハギよりも前方に開口します。下記写真の青い線は、えら孔前端から伸ばしています。
ウマヅラハギの鰓孔。鰓孔前端と眼の位置関係(提供:椎名まさと)
キビレカワハギの鰓孔。鰓孔前端と眼の位置関係(提供:椎名まさと)また、ウマヅラハギのヒレは青みを帯び、キビレカワハギのヒレは黄色味を帯びるという違いもあります。
しかし、千葉県からは、体が全体的にウコン色で、ヒレも鶯茶色をしたウマヅラハギ属の魚が採集されたことがあります。色彩的な特徴はキビレカワハギに似ているものの、その個体は形態的なものおよび遺伝的な解析を行った結果、ウマヅラハギの変異個体と結論づけられました。
つまり、鰭の色彩による同定方法はときに怪しいところがあるのです。
このほか、ウマヅラハギの体側には雲状斑があるとされていますが、この斑紋が薄い個体もいますので注意が必要です。
そのほかのそっくりさん
ウマヅラハギ属はウマヅラハギとキビレカワハギのほか、日本からは合計7種が知られています。
そのうちゴイシウマヅラハギThamnaconus tessellatus(Gunther, 1880)とサラサハギThamnaconus hypargyreus(Cope, 1871)は、体側に特徴的な大きな暗褐色の斑点があり、シルエットはよく似ているものの、ウマヅラハギとは容易に見分けることができます。
ゴイシウマヅラハギ(提供:椎名まさと)これらの種はどちらもやや深い海に生息し、深場の延縄や底曳網漁業などにより漁獲されますが、私たちも深場の釣りで出会うチャンスがあるかもしれません。
サラサハギ(提供:椎名まさと)このほか日本産のウマヅラハギ属魚類はナンカイウマヅラハギ、アズキウマヅラという種が知られているほか、センウマヅラハギという種も知られています。
このセンウマヅラハギは従来センウマヅラハギ属Cantherhinesという別属のものとされていましたが、現在はウマヅラハギ属に移されました。この移動にともないCantherhinesという属の標準和名はハクセイハギ属と改名されました。
1
2