兵庫県神戸市にある「AQUARIUM×ART átoa(アトア)」と、AIを活用したシステム開発を行う株式会社神戸デジタル・ラボ(KDL)が共同で進めるAI生態観測プロジェクトは今年4月より、来館者がカピバラの行動研究に参加できる体験展示を初めて実施しています。
アトア開業5周年を記念した特別企画で、AIの学習に必要な「アノテーション」作業をゲーム感覚で体験しながら、水族館の研究に貢献できるのが特徴だといいます。
AIでカピバラの行動を見える化
両者は2023年4月から共同でAIを活用した生態観測の実証実験を開始。
アトアのカピバラ展示エリア天井に設置したカメラで日中の様子を撮影し、動画からカピバラの位置や移動をAIがリアルタイムに判別・追跡できるよう、AIモデルの開発・チューニングを行っています。
このAIの精度向上に欠かせない作業が、来館者にも体験してもらう「アノテーション」です。
来館者がアノテーションを体験
体験展示は4月17日まで、アトア4階「SKYSHORE(空辺の庭)」のカピバラ飼育エリア前で実施中。開館時間中は誰でも参加でき、体験料は無料(別途入館料が必要)です。
会場にはタッチパネルが設置され、来館者はリアルタイム映像に映るカピバラを見つけて指で四角く囲み、位置情報を入力。続いて「歩く」「泳ぐ」「転がる」「走る」「座る」などの選択肢から、その瞬間の行動を選んで登録します。
アノテーション体験(提供:株式会社神戸デジタル・ラボ)入力されたデータは別画面で集計され、時間帯ごとの行動の種類や分布が一覧で表示されるため、自分の入力がどのように蓄積・可視化されているかをその場で確認できます。
データ確認もできる(提供:株式会社神戸デジタル・ラボ)来館者が楽しみながらAIの仕組みと研究の一端に触れられることに加え、水族館の研究活動に一般の来館者が直接参加しデータを提供する取り組みは、これまで例が少ない新しい試みだといいます。
集められたアノテーションデータは、AIモデルのチューニングに活用し、生物行動分析の精度向上やストレスの少ない飼育環境づくりに役立てられる予定です。
他分野への展開も期待
本実証実験では、KDLがAIモデルおよびそれを用いたソリューションの設計・構築を担当。同社は今後、カピバラの行動可視化で得られた成果を他分野の課題解決にも応用していく考えです。
来館者によるアノテーションを生物行動分析のデータとして蓄積し、AIによる解析と組み合わせることで、動物福祉の向上や展示の工夫につながる新たな知見の獲得が期待されています。
また、このプロジェクトはKDLの学生インターンが主体となって進めている点も特徴。AI・データ分野に関心を持つ学生にとって貴重な経験の機会となりそうです。
本展示について詳しくは、株式会社神戸デジタル・ラボの公式ホームページに掲載されています。
※2026年4月5日時点の情報です
(サカナト編集部)