毎年5月2日は国連が定めた「世界まぐろデー(World Tuna Day)」です。
日本人にとって身近な魚であるマグロですが、国際的に需要が高まる中、生態的、経済的重要性を認識するために設けられた記念日だといいます。
筆者が「マグロ」と聞いて思い出すのは、学生時代の実習です。
水産系の学校に通っていた私は、漁業実習でマグロの延縄(はえなわ)漁業を経験。なかなか経験することのないすさまじい延縄実習を通して、水産業を支える人たちへの敬意と感謝の気持ちが自然と湧いてきました。
マグロの代表的な漁法「延縄漁」
マグロは一般的に、竿釣り、巻き網漁、定置網漁、延縄(はえなわ)漁といった漁法で漁獲されます。
この中でも特に代表的な漁法が「延縄漁」です。
実際に体験した延縄漁
ここで説明するのは、私が実際に経験した延縄漁についてです。
漁船のイメージ(提供:PhotoAC)まず枝縄(えだなわ)という針と餌がついた縄が、幹縄(みきなわ)という縄に取り付けられ、夜明け前から海に投入されます。
針は2500〜3000本ほどあり、約5時間かけて全ての縄を投入。餌は、イカやサンマ、アジなどです。
マグロがかかるまで3〜4時間待ち、その後縄を揚げる10時間ほどの作業に入ります。
延縄漁 図解(提供:竹原とも)実習では、針の数を1000〜1500本程に減らして実施し、朝4時くらいから夕方までには操業が終わりました。それでも、朝から作業し、夕飯を食べる頃にはかなりへとへとだった記憶があります。
縄を揚げる際、何も魚がかかっていない針付きの枝縄は手でまきとり、次の操業に向けてカゴへと収納。魚がかかった場合は、船首から船尾へと移動し、モリを使って刺激してから船尾のデッキに引き上げます。
魚がかかっていないことの方が多いため、一列に並び、順番にひたすら枝縄をまきとっていました。おかげさまで、日常生活でホースのまきとりが得意になりました。
バショウカジキの立派なひれに感動
実習を行った海域は、インドネシアのバリ島を出港した後のインド洋でした。
獲れた魚は、キハダ、メバチ、ビンナガといったマグロ類のほか、カジキ(メカジキ、バショウカジキ)、ミズウオ、シイラ、タチウオ、サメ・エイの仲間です。
マグロはキハダが多く獲れ、カジキもよく獲れました。バショウカジキの特徴である大きな第一背鰭を初めて見たため、きれいで立派なひれに感動してしまいました。
深海魚のミズウオも多く獲れましたが、とても鋭い歯を持っていて、同じ班の一人が負傷してしまうアクシデントもありました。
やっぱりサメはこわい!サメがかかった時の恐怖体験
先に挙げた通り、マグロの延縄漁で漁獲されるのはマグロだけではありません。
私が体験した延縄漁での思わぬゲストは、パニック映画でおなじみの「サメ」でした。
サメのイメージ(提供:PhotoAC)「サメーーー!」という甲板部の乗組員の緊迫した声と同時に、枝縄を船首で揚げながら、船尾の方へ移動していき、学生は手を出さないように言われます。
ここぞとばかりに大暴れで波を立ててくるサメ。映画に出てくるようなワンシーンが目の前で繰り広げられ、「今海に落ちたらどうしよう……」と良からぬ想像ばかりしてしまいました。
1匹だけで“お腹いっぱい”でしたが、3匹くらいはかかっていたような気がします。もちろん全てリリースです。
サメへの恐怖心が間違いなく強くなった瞬間でした。
獲れたマグロの神経を締める
揚げ縄の際には、マグロが獲れた時に体の長さや重さの計測、処理をする班も設定されており、私も処理班を担当する日がありました。
マグロやカジキが獲れた時は「マグロキャッチャー」と呼ばれるカゴの中に入れて、船の後ろのデッキに運び、まず神経を締めます。
マグロ解体のイメージ(提供:PhotoAC)神経を締めるには、マグロの目と目の間にピックを刺し、ぐりぐりと刺激して神経を破壊。刺し始めはビクッと痙攣したような動きをするため、驚いて躊躇してしまいましたが、乗組員から「暴れるからためらうな!」と言われ、2人がかりで思いっきり力を入れました。
魚は、釣り上げられた時に暴れることがありますが、この暴れる時間をいかに短くするかで美味しさが変化します。
神経を締めた後は、急いで計測や血抜きをし、冷凍庫へ運搬しました。
水産業を支える人たちへの感謝を忘れない
かなり大変なマグロの延縄実習の経験から、いつも気軽に食べているマグロの裏側には、漁業関係者のすさまじい苦労と努力があると痛感したことをよく覚えています。
水産系の学校に入ると、様々な実習があります。延縄実習の他にも、トロール漁業実習やイカ釣り実習などもありました。
水産業を支える人たちへの敬意や感謝の気持ちを忘れないように魚介類を美味しく食べたいですね。
(サカナトライター:竹原とも)