海洋研究開発機構(JAMSTEC)と群馬大学の研究グループは、水産加工で発生するカニ殻由来の副産物を利用し、海洋生分解性プラスチックの分解スピードをコントロールする手法を開発しました。
対象となったのは、生分解性プラスチックの一種であるポリ(PHBV、3-ヒドロキシブタン酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)で、海水中での寿命を用途に応じて調節できる可能性が示されたとしています。
本研究の成果は、2026年3月24日に国際学術誌Polymer Degradation and Stabilityにオンライン掲載されました(論文タイトル:Chitin-Rich Crab Shell By-Products Modulate the Marine Lifetime of PHBV Films via Plastisphere Remodeling)。
カニ殻由来成分でPHBVの分解速度を調節
研究グループは、カニ殻から得られる成分をPHBVに加えることで、海水環境での分解速度が変化することを確認しました。
具体的には、カニ殻副産物の配合量や処理条件を変えることで、分解が進むまでの期間を長くしたり短くしたりできることが分かったといいます。
これにより、海洋環境中で一定期間は形を保ち、その後は自然に分解していくプラスチック製品の設計につながると期待されています。
カニ殻(提供:PhotoAC)海洋プラスチック問題と水産副産物活用の両面で期待
海洋に漏出したプラスチックごみが長期に残存することは、海洋汚染や生態系への影響として深刻な問題となっています。一方、生分解性プラスチックであっても、用途に応じた“持たせたい期間”の設計は課題でした。
今回の成果は、海で分解するプラスチックの寿命をコントロールできる可能性を示した点で、海洋ごみ削減に向けた新たなアプローチといえます。
また、水産加工で発生するカニ殻副産物を有効利用する技術としても期待が高く、資源循環と環境負荷低減の両面で波及効果が見込まれます。
実用化に向けた今後の展開
研究グループは、今後、さまざまな海洋環境条件での分解挙動の評価や、実際の製品化を見据えた加工プロセスの検討を進める方針です。
漁具や養殖関連資材、海洋観測で用いる器具など、海中で使用されるプラスチック類への応用が想定されており、「必要な期間は性能を維持し、その後に分解する」といった寿命設計を行うことで、機能性と環境配慮を両立した素材開発につながるとしています。
(サカナト編集部)