我々の常識では魚の生活圏では水の中ですが、中には地上へ進出した魚も存在します。
キノボリウオ(木登り魚)は地上での活動が可能な魚の1種で、“木を登る”ことからこのような名前が付きました。
この記事ではキノボリウオについてご紹介します。
キノボリウオとは
キノボリウオはスズキ目キノボリウオ亜目キノボリウオ科に分類される魚(キノボリウオ亜目は研究者によってキノボリウオ目とする場合もありますが、本記事ではキノボリウオ亜目として扱います)。木登り魚と名付けられている他、英語では Climbing perch と呼ばれていますが、実際には木を登らないことは非常に有名です。
キノボリウオ亜目にはキノボリウオ科の他に観賞魚として需要の高いベタ(闘魚)やグラミーもこのグループに含まれ、日本では国外外来種であるゴクラクギョ科の2種、タイワンキンギョとチョウセンブナが記録されているようです。
地上でも生存可能の秘密はラビリンス器官
キノボリウオ亜目の魚たちを総称してアナバス、ラビリンスフィッシュと呼ぶことも。
このラビリエンスという聞きなれない単語はキノボリウオ亜目が持つ特殊な呼吸器官であるラビリンス器官に由来します。
通常、魚の呼吸は水中の酸素を鰓弁が取り込むことにより行われますが、キノボリウオ亜目では鰓の他にラビリンス器官と呼ばれる呼吸器官を持ちます。この器官の働きにによって空気中から酸素を取り込むことができるのです。
そのため、短時間であれば地上でも生存可能で、地上を短距離移動する様子も観察されています。木を登ることはできないものの、ある程度であれば地上で活動することが可能なのです。
重要な食用魚
名前や生態、形態様々な特徴を持つキノボリウオですが、食用としても非常に重要な魚です。
特に東南アジアではよく食べられており、市場や飲食店で普通に見ることができます。日本でも輸入キノボリウオが冷凍で流通しており、イスラム教徒向けのハラール店で買うことができます。一方、日本に分布するゴクラクギョ科の2種は小型種であるため食用になることはないようです。
キノボリウオという名を持つものの、実際に木は登らないとされています。一方で食用として重要な魚であり、味も良い魚なのでした。日本でも手に入れることができるので一度食べてみたいものですね。
(サカナト編集部)