日本最大の干潟である有明海では古くから漁業が盛んであり、様々な海産物が水揚げされています。
1~4センチ程度の小さなエビであるアキアミは有明海で漁獲される海産物のひとつであり、鮮度の低下が早いことからアキアミを塩漬けにした「アミ漬け」に加工されます。
産地であっても生で食べることは珍しいというアキアミですが、有明海に面する福岡県柳川市の飲食店3店で現在、生のアキアミを使った「アキアミ丼」が販売中です。10月14日までの試験販売となります(福岡 柳川 「生アキアミ丼」を新名物に 市内の飲食店で提供へ-NHK)。
アキアミとは
アキアミ(Acetes japonicus)はサクラエビ科アキアミ属に分類される1~4センチ程度の小型甲殻類で、日本各地の沿岸部に広く分布。本種の名前の由来は「秋頃に沿岸部に集まること」と言われています。
アキアミは見た目がオキアミに似ること、名前に「アミ」と付くことからオキアミの仲間と誤解されがちですが、れっきとしたサクラエビの仲間で、岩手県などで漁獲されるイサダ(ツノナシオキアミ)とは異なるグループの甲殻類です。
なお、日本のアキアミは本種の他に沖縄県から熱帯種であるジボガアキアミ(Acetes sibogae sibogae)などが知られています。
世界で最も漁獲量の多い甲殻類
日本ではあまり馴染みのないアキアミですが、アキアミ類自体は世界の熱帯~温帯に広く分布。アキアミ類は世界で最も漁獲量の多い甲殻類とも言われており、特に南アジアや東南アジアでは重要な水産資源のひとつです。
また、生物量が多いことから様々な海生生物の餌資源としても重要な役割を担っていると考えられています。
日本のアキアミ 鮮度の良いものは刺身でも食される
日本のアキアミ(Acetes japonicus)は河口域や干満差の大きい穏やかな海に生息しており、特に有明海、瀬戸内海中央、豊前海などで多く見られるエビです。
アキアミは味が良いことから、多産する地域で本種を対象にした底引き網や浮きびき網、すくい網で漁獲されています。漁獲されたアキアミは塩辛などに加工される他、高鮮度のものは刺身で食べられているようですが、ほとんどが地元で消費されるようです。
岡山県は日本屈指のアキアミの漁獲量を誇り、塩辛やかき揚げ食べる他、「アミ大根」は本種を使った岡山県の郷土料理として知られています。
また、新潟県では赤くて長い大第2触角を持つことから「アカヒゲ」とも呼ばれており、味が良いことから高値で取引されるそうです。「アキアミのかき揚げ」は新潟県の郷土料理として知られいます。
柳川市で生のアキアミが食べられる
福岡県柳川市は日本最大の干潟である「有明海」に面する町で、市内には有明海の幸を扱う飲食店がいくつか存在します。
今回は9月9日から10月14日の約1ヶ月間、柳川市にある3つの飲食店では生のアキアミを使った「アキアミ丼」を試験的に販売。アキアミは鮮度の低下が早い為、産地であっても生のアキアミが食べられるのは珍しいといいます。
流通と冷凍技術の発達、インターネットの普及により、どこにいても全国様々な水産物が食べられるようになりました。しかし、生のアキアミのように産地へ行かなければ食べられないものも存在します。
今後、生のアキアミが有明海の珍味のひとつになっていくかもしれませんね。
(サカナト編集部)