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岐阜県が誇る県魚<アユ>がお客様の胃袋に入るまで 天然鮎のセリの流れとは?

5月11日、長良川鵜飼の開幕と共に解禁されるのが長良川の天然鮎漁

ただし、5月中は網での漁しかできない。半月が過ぎ、6月になると「友釣り」が順次解禁される。友釣りについて簡単に説明するとこうだ。

友釣りはアユの縄張り意識が強い習性を利用した独特の釣り方。生きたアユに針をつけ、わざと他のアユに近づける。ここからが釣り師の腕の見せ所。縄張りに入ってきた囮アユを追い払おうとしたアユに上手く針を引っ掛ける。

上手な漁師は鮎の背中に針をかける。それはまるで釣り針に目がついているかの様な所業。

背中に針がかけらたアユ(提供:PhotoAC)

そのアユが岐阜中央卸売市場の天然鮎専用競り場、通称「ばん台」に並ぶ。そして、参加者がばん台を取り囲む。

今ではセリの参加者が少なくなりぐるっと1周取り囲むだけだが、私の幼少期以前は2重、3重と人の群れがあった様に記憶している。

ばん台を中心に行われるアユのセリ 解禁日の緊張感は別格

筆者は岐阜県岐阜市で魚屋兼飲食店「食べる水族館UOGI」を経営している。ここから先は魚屋である私の生業とも言える「セリ」の様子をお伝えしたい。

早朝に鳴り響く警報音 セリが始まる

午前6時、岐阜市場に大きな警報音が鳴り響く。セリ開始の合図だ。競人(“あんこう”とも呼ぶ)の威勢の良い声と共にセリが始まる。

緊張の瞬間。ただし、毎年5月11日の解禁日のそれは別格だ。

セリが始まると次々に専用の木箱に入った県内各河川の天然鮎が流されてくる。競争相手は自分自身。とカッコよく言いたいが、そうも言っていられない。

アユ(提供:PhotoAC)

お客様の要望や自分自身の目利きと長年のカン(これが一番厄介で、なかなか思い通りにいかない笑)。

ともかく、一番は自分自身が納得できるかどうかが大切だ。セリに参加する人それぞれが、自分の納得できるところが違うから面白い。

アユの入荷が多いと思わぬハプニングも……

岐阜市場はセリを行う大卸が2社あり、毎朝セリの順番が交互に早番・遅番と入れ替わる。アユの入荷が多い時は、木箱に入ったアユを500枚近くも競り合う。

アユ(提供:PhotoAC)

お目当てのアユを競り落とし、いい加減飽きてくると競り場から逃げ出そうとするのだが……あんこう(競人)に呼び止められることがある。「コイツの目は360度見えるんじゃないか!」と思う時もあるぐらいだ。

そうして、買わなくてもいい量を買ってしまう。競人の腕でもあるのだが、自分の心の弱さにも反省しながら競り落とした鮎をトラックに積み込む。

この時すでにお客様(卸売り先)の顔を思い浮かべる。誰がどの鮎を喜んでくれるのかを考え、サイズや値段をもとにお客様に連絡する。

そんなタイミングで、市場にくるスーパーの社長や仕入れ業者からも「買いたい!売ってくれ」の声がかかる。本当に感謝しかない。

市場から帰ってくるとアユは海産物と共に店頭に並ぶ

アユは一般小売りのお客さまには1尾ずつ、飲食店にはアユが何匹も入った木箱(約1kgほど)で販売する。加えて、筆者の魚屋では店内のイートインがある。お昼前から少し早めの夕食時まで店内でアユが食べれるのである。

さらに、店舗終業後に残ったアユを竹串に刺し、軽めに焼いて冷凍する(下焼き)。こうすることで鮮度を保つことができ、イベント出展時に炭火で香ばしく焼き上げ提供することが可能になるのだ。

お客様が笑顔で「今日も美味しかったよ!」と言って一日が終わるのが何よりの喜び。だから毎朝市場に足を運び、五感をフル活用し長年培った確かな目利きで気に入った魚しか仕入れない。

これが筆者流の“岐阜の鮎”を余すとこ無く楽しんでもらう方法だ!

(サカナトライター:内藤彰俊)

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内藤彰俊

海なし県“岐阜”で115年続く魚屋の4代目。

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