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アンコウの仲間<オキアカグツ>を食する! アカグツとの見分け方と食味とは

昨今は深海魚が人気です。見た目も、色彩も浅い海に生息する魚と異なる点が多くあり、それが人気の秘密なのかもしれません。

アンコウ目アカグツ科のオキアカグツも、水深100~300メートルほどの深さの海に生息しているやや深海性の魚で、体は小さな棘に覆われています。あまり食用にはなりませんが、私はこのオキアカグツを入手する機会に恵まれました。

今回はオキアカグツの消化管内容物や、近縁種のアカグツとの見分け方などの観察と食味についてレポートします。

オキアカグツとは

オキアカグツ(学名 Halieutaea fitzsimonsi)はアンコウ目・アカグツ科・アカグツ属の魚で、基本的に水深100~300メートルほどのやや深海に生息している魚です。

オキアカグツ(撮影:椎名まさと)

アカグツ属の日本産種はほかにアカグツ、ヒメアカグツ、ヘリグロアカグツ、テンジクアカグツ、トゲアカグツという種がいますが、これらの種については色彩や斑紋、腹部の棘の大きさや有無などを組み合わせて同定する必要があります。

ヒメアカグツはオキアカグツと同じく腹部に棘がないですが、オキアカグツの背面に見られる特徴的な斑紋はアカグツには見られないものです。一方アカグツは背面が一様に赤いのですが、オキアカグツのような斑紋を有する個体もいて斑紋や色彩だけでは同定できず、腹面の特徴を見る必要があります。

オキアカグツの腹部には棘がないのに対し、アカグツの腹部には小さな棘が密生しています。筆者にとって、この模様がはっきりしていて、かつ腹部に棘がないオキアカグツというのはいつか見てみたい憧れの魚でした。

アカグツ科の魚たち

オキアカグツが含まれるアカグツ科の魚は世界で90種ほどが知られる、アンコウ目のなかで最も多くの種を含むグループです。アカグツ科の特徴としては体に小さな棘やいぼ状の突起物などがならび、背鰭軟条の前方に棘条がないなどの特徴を有しています。

アカグツ科のワヌケフウリュウウオ(撮影:椎名まさと)

基本的に深海性のものが多いのですが、アカグツ属の魚やニシフウリュウウオ属の魚は浅い砂底でダイバーによって撮影されることもあります。これらの種は水族館やホームアクアリウムにおいてもごくまれに見ることができます。

この科の英名は「Batfish」、背面からみるとコウモリのようにも見えますが、フィリピンの魚類データベースサイト「Fishbase」におけるアカグツのコモンネームは「Minipizza batfish」とされており、これはその形に由来します。

オキアカグツを観察する

2015年12月、待望のオキアカグツが我が家にやってきました。このオキアカグツは東シナ海で操業する以西底曳網漁によって漁獲されたものです。やって来たオキアカグツを様々な視点から観察しました。

アカグツとの違いの観察

オキアカグツの腹面(撮影:椎名まさと)

オキアカグツは同じ属のアカグツによく似ていますが、アカグツは腹部(腹鰭から肛門の間)を撫でるとビロードのような小さな棘に覆われているのに対し、オキアカグツではおなじところがすべすべ、というかつるつるとしています。

アカグツの腹面(撮影:椎名まさと)

筆者はかつて、背面の模様が特徴的なのがオキアカグツと思っていたことがあり、これまで出会ってきた「オキアカグツ」と思っていたものがいずれも腹部が小さい棘に覆われていたので、この形質は誤りではないかと思っていたのです。

しかし、初めてオキアカグツに触れて見て、書籍で示されている特徴と同じであることに感動したのでした。また、これまでアカグツとオキアカグツを分けていた特徴と思っていた背面の特徴的な斑紋はアカグツにも現れるものと理解できたのでした。

消化管内容物と寄生虫の観察

キンセンモドキの仲間(撮影:椎名まさと)

オキアカグツの消化管の中からはたくさんの餌生物が出てきました。その中でもキンセンモドキの仲間や、コブシガニの仲間といった小型のカニ類がとくに多く見られました。

コブシガニの仲間(撮影:椎名まさと)

魚なのに泳ぐのがあまり上手ではないオキアカグツはカニやヤドカリなどの底生生物を主に捕食しているようで、東シナ海産の近縁種アカグツではシャコ科やテッポウエビの仲間、チュウコシオリエビの仲間、イシガニ属のカニなども出ているようです。ただ魚類も少しは捕食するようです。

消化管の中の寄生虫。線虫の仲間(撮影:椎名まさと)

アカグツ属の魚の消化管の中には、たくさんの線虫類がおり、消化管を裂くと中から線虫が絡み合った状態で出てきます。

魚類で線虫といえば「アニサキス」が有名ではありますが、このアカグツに寄生する線虫は消化管内のある場所に密集し、それ以外の場所ではほぼ見られず、ヒトに無害とされます。

この寄生虫は水温20℃前後、海水魚飼育用の人工海水で生かしていましたが、翌日には全滅してしまいました。

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椎名まさと

魚類の採集も飼育も食することも大好きな30代。関東地方に居住していますが過去様々な場所に居住。特に好きな魚はウツボ科、カエルウオ族、ハゼ科、スズメダイ科、テンジクダイ科、ナマズ類。研究テーマは魚類耳石と底曳網漁業。

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