アフリカツメガエルというカエルをご存じでしょうか?
アフリカツメガエルは見た目が可愛いだけでなく、古くから研究にも使われている実験モデル動物でもあります。今回はアフリカツメガエルの魅力と研究について解説するので、興味がある人はぜひ読んでくださいね。
顎が小さく平べったいアフリカツメガエル
アフリカツメガエルはその名の通り、アフリカ原産(サハラ砂漠以南)のカエルです。
平べったい形をしていて、頭が小さいのが特徴で、愛嬌のある見た目で人気を博します。学名がXenopus laevisなので、研究室ではゼノパスと呼んでいます。
ゼノパスはラテン語で「風変わりな足」、レービスは「滑らかな」という意味です。後ろ足の5本の指のうち、3本に黒い爪が生えているため、ツメガエルと名が付きました。
メスの方がオスよりも大きく、メスには総排泄溝(そうはいせつこう)という突起がお尻にあるのが特徴です。
アルビノ(色素細胞に異常がある白っぽい個体)も作出されています。
愛嬌のある姿と食事のしぐさが人気
アフリカツメガエルはずんぐりしているようで、ぺっちゃんこな姿形をしているため、とにかく愛嬌があります。
短い前足でエサを口に運ぶのですが、結構ボロボロと口からこぼれてしまう、少し残念な食事風景も可愛くて仕方ありません。
研究でアフリカツメガエルを飼育している人にはよく理解できる感覚だと思いますが、とても癒されるやんちゃ坊主のようなカエルです。
ペットとして飼育されるよりも、大型の魚などのエサとして売られているため、ペットとしてはあまり知られていないカエルだと思います。
世界中で最新研究に使われるアフリカツメガエル
アフリカツメガエルは、脊椎動物を代表とする実験モデル動物です。
昔は妊娠検査薬の代わりにも使われていました。妊娠女性の尿にはヒト絨毛性ゴナドロピン(性腺刺激ホルモン)が含まれており、その尿をアフリカツメガエルのメスを飼育している水槽に加えると、翌日に産卵が起こるという生命の神秘を利用したものです。
脊椎動物の初期発生段階(原腸形成・神経管形成・体軸形成など)を短時間で確認できるため、古くから研究対象にされてきました。受精からオタマジャクシまではたったの2日間で到達できるのです。
また、ガードン博士が世界で初めて、脊椎動物で体細胞クローンを作出した生物でもあります。この研究がなければ、羊のドリーの研究も行われなかったでしょう。それだけ、すごい実験モデルとして世界中で愛されるカエルです。
1回の産卵で4000個程度の卵&年に何回も産卵可能
1回の産卵で4000個程度の卵を産み、年に何回も産卵可能なので、遺伝的に同一な卵を使った多くの実験ができることが強みとなります。また、餌は生き餌、冷凍レバー、ネズミ飼育用のペレットなど何でも食べるため、飼育が簡単です。
また、卵の大きさが直径1.3mmもあるため、遺伝子導入や観察が容易であることも研究にはもってこいで、古くから研究に使われてきたのでしょう。
アフリカツメガエルは外来種 責任を持って終生飼育しよう
可愛い、研究にも最適と愛されるアフリカツメガエルですが、外来種です。
アフリカ原産で冬がある日本では生きられないと考えられていましたが、現在、野外に放たれた個体が繁殖し、静岡県や和歌山県、兵庫県、鹿児島県では定着している可能性が高いです(外来種アフリカツメガエルの野外拡散防止についてー日本ツメガエル研究会)。
高い繁殖力と雑食性のため、在来水生生物を捕食し、生態系に影響を及ぼし始めています。飼育し始めたアメリカツメガエルは絶対に外に放さず、責任を持って終生飼育をしてください。アメリカツメガエルに限らず、生物の飼育は責任をもって行いましょう。
アフリカツメガエルは、そのユニークでかわいらしい見た目からペットとしても人気なカエルです。上記の点に気を付けたうえで、自宅でアフリカツメガエルとの日々を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:額田善之)