2025年は巳年です。皆さんは「ヘビ」の名がつく魚たちのことを知っていますか。
ぱっと思いつくのはやはり「ウミヘビ」でしょう。魚類と爬虫類、どちらにも“ウミヘビ”と呼ばれる生きものが属していますが、ここでいうウミヘビとは魚類のウミヘビです。
「ヘビ」と同じく細長い体を持っていますが、鱗を持たないことや、鰓呼吸を行う点で爬虫類のウミヘビと大きく異なります。
そして、海には他にも「ヘビ」がつく魚がいるんですよ。
名前に蛇(へび)が付く魚 体が長くない種も
魚の標準和名に動物の名前が付くことは珍しくなく、「ヘビ」はその一例です。
ヘビという動物の性質上、体が細長い魚に付けられがちな単語であり、名前に「ヘビ」が入る魚はウミヘビ科をはじめとするウナギ目やゲンゲ科ヘビゲンゲ属の魚が大部分を占めています。
一方、体が長くないにもかかわらず「ヘビ」の名を持つ分類群として、ヘビギンポ科が挙げられます。
蛇っぽくないけど「ヘビ」ギンポ
ヘビギンポはスズキ目ギンポ亜目ヘビギンポ科に属する魚で、南日本の浅海域でごく普通に見られます。
ヘビギンポ科は30種以上の種が知られており、いずれも浅海性の小型種。クロマスクやミカンヘビギンポなどユニークな名前が多い分類群でもあります。
本科に属する魚のほとんどが南方域に生息し、日本列島で広く見られる種は主にヘビギンポ種です。
なぜヘビギンポという名前が付いたのかは不明で、むしろ同じギンポ亜目のイソギンポ科の中にはウナギギンポという「ヘビ」のように長い魚がいるくらいです。
実際、ウナギギンポ科の一部はその長い体に由来し、英名ではSnake blennyとも呼ばれています。
背びれを3つ持つ珍しい魚
そんなヘビギンポですが、実は大変珍しい形質を持っている魚でもあります。
多くの魚では背びれを1つか2つ持ちますが、なんとヘビギンポ科では背びれを3つ持ちます。
日本産魚類で背びれを3つ魚はヘビギンポ科のほかにタラ科やセミホウボウ科など、一部の魚類で知られるとても珍しい特徴です。
なお、この特徴から英語ではTriplefin blennyと呼ばれています。
“Snake mackerel”とは日本語で何?
日本語でヘビの名がつく魚はこれまでに紹介してきた魚に加えて、あとはヘビハゼくらい。しかし、英語で“Snake”が付く魚は意外にも多くいます。
例えばタイワンドジョウ科の魚(ライギョの仲間)の一部は英名で“Snake head”と呼ばれており、この名は日本国内でも流通名として有名です。
では“Snake mackerel”と呼ばれる魚なにか分かりますか? ヒントは“Mackerel”はサバを意味する単語ということです。
サバの近縁種で細長い体の魚
正解はクロタチカマスです。
クロタチカマスはクロタチカマス科に属する大型魚で本科の中では非常に長い体を持つことが特徴。有名なクロタチカマス科としてクロシビカマス(スミヤキ)が食用として知られています。
クロタチカマスも骨が多いものの味はよく、小田原では時期になると夜間に釣獲されたものが市場に並びます。
また、クロタチカマス科はスズキ目サバ亜目に分類されるサバに近縁なグループであり、“Snake mackerel”と呼ばれる理由は細長い体に加え、サバと近縁であることが由来と考えられます。
動物の名前が付く魚はたくさんいる
このように日本だけでなく、海外でも名前に「ヘビ」が付く魚がたくさんいます。
また、この他にもウシやブタ、キリンなどさまざまな動物の名前が魚に使われている例が見られます。
ぜひ、他にもどんな動物の名前が使われているのか探してみてください!
(サカナト編集部)