子育ても少し落ち着き、ダイビングを再開して潜り始めた今年の夏。楽しく潜っていたある日、大好きなピグミーシーホースと再会することになりました。
しかしそこで、15年のブランクの間に起こっていた自身の老化現象を思い知らされることになったのです……。
ダイビングのブランクからの復帰
筆者は20代の頃に小笠原へと移住。当初は休みの度にダイビングをしたりドルフィンスイム船に乗ったりと海三昧で、父島列島の東西南北で色々な場所を潜っていました。
その後は出産・子育てもあり、海に潜る機会は無くなりました。子育ても少し落ち着いたので、数年前から年1回のペースで潜りにいくようになり、今年はダイビング友達もできて、月1のペースで潜りに行くようになりました。
気づけば15年のブランク。ここまで期間が空いていると、どこを潜っても楽しく、初めてのポイントも潜ったことがあるポイントも全てが新鮮です。
可愛さ100倍!ピグミーシーホース
今年10月、まだまだ暑い小笠原の海で、初めて潜るポイントに行きました。
事前説明では、「ここではピグミーシーホースが見れます。ウミウチワが数枚生えているので、1人1枚でじっくり見れます」との案内がありました。15年ぶりにピグミーシーホースを見れるなんてワクワクしかありません!
ピグミーシーホース(以下ピグミー)とは、極小のタツノオトシゴの総称で、大きさは“人差し指の爪ぐらい”。実際には、クルンと巻いた尾でサンゴにしがみついているのでもっと小さく感じます。
同種は、日本では小笠原で初めて発見されました。大きなタツノオトシゴもあの不思議な姿から目が離せないのに、さらに小さくてピンク色の個体なんて可愛さ100倍です。
そして、ピグミーがしがみついているウミウチワとは、名前の通り<海の中のうちわのようなサンゴ>で、花虫綱トゲヤギ科に属するサンゴのことをいいます。岩にうちわがくっついているかのような華やかな見た目が特徴ですが、その正体は「ソフトコーラル」。
サンゴ礁をつくっているのは硬い骨格を持つ「ハードコーラル」で、触ると骨のような感触ですが、ソフトコーラルは体内に細かい骨格が散りばめられているため、波に揺れるほど柔らかいです。
ピグミーシーホースとの再会
海底につくと、ウミウチワが何枚も岩の壁から生えています。
サイズはうちわ2枚分のサイズから大きい物は1メートル程のものまでさまざま。参加者は思い思いのウミウチワに張り付き、ピグミーを探し始めました。
私も手頃なサイズのウミウチワで探し始めるものの、なかなか見つかりません。そこで、自分で探すのはいったん諦めて、まずはひとめ見ようとガイドのところへ行き、居場所を教えてもらいました。
そして……「いた!」
笑顔でOKサインを出して、しばらく観察。カメラを持っていないので、目に焼きつけようととにかく見る!
ピグミーと目が合わない…もしかして!
しばらく観察して、ふと気づく。
「あれ? 目があわない」
若い時にピグミーと出会った時は目があったのに、今回はピグミーの目が分からない。ピグミーがいることは分かる。見えている。でも、そこにあるはずの目か見えない……。
「老眼だ……!」
そう、小さい文字は離さないと見えないという、あれです。もう5年のおつきあいなので、陸上で自分が老眼なのは知っています。しかし、まさか楽しみにしていたピグミーとの再会で、老眼の洗礼をあびるとは……。
その後は老眼を確認するため、マクロを意識して、小さなウミウシを探すなどしたものの、やっぱりピントがあっていない。ショックを受けながら船上にあがると、みんな口々に「ピグミーいたねー。かわいかったね。赤と黄色がいたねー」と楽しくはずむ会話。
友達が撮った写真を見せてもらうと、そこにはキュートな目をしたピグミーがいました。やっぱりかわいい。
私が「老眼にはピグミーはきつい!」と語ると、同年代の友達はさくっと「そんなもんだよ。そんなもんだからカメラを向ければ良いんだよ」と答えました。
ピグミーを見つける秘策!?
撮影すると拡大できるから目まで見えるよ、と。なんという大胆なアドバイス。
加えて、ピグミーを見つける秘策も教えてくれました。人が近寄る前のウミウチワはポリプが開いているから、ピグミーの体のでこぼことはあきらかに違うのだとか。
サンゴの仲間は骨格の上にポリプがあります。イソギンチャクに似た姿で触手を伸ばして餌を捕まえるのです。敵が近づいたり危険がせまると触手を引っ込めるので、人が近寄る前はポリプが開いているのです。触手がひらいているときは花が咲いているようでとても綺麗です。
なるほど、次回のヒントにしよう。そして、カメラを購入して挑もう。
老眼でもマクロを楽しみたいのだ。虫眼鏡を持っていく手もある。今年は、ピグミーリベンジに出かけるぞ。
(サカナトライター:mami)