プライドフィッシュとは、JF全漁連が各都道府県の漁連・漁協と共同で行っているプロジェクト。魚の消費量が減少傾向にあることを背景に誕生した「ファストフィッシュ」と表裏一体のプロジェクトです。
今回はプライドフィッシュについて詳しくご紹介します。
プライドフィッシュとは
プライドフィッシュプロジェクトは魚の本当のおいしさを知ってもらいたい、「週末や旅行先でおいしい魚を食べたい」というニーズに応えるために誕生しました。
では、プライドフィッシュとは具体的にはどのような魚のことなのでしょうか?
プライドフィッシュは、各都道府県の漁協が選んだ「本当においしい魚」のことです。プライドフィッシュは“フィッシュ”と付きますが、選定されるのは魚だけではなく、海藻、甲殻類(カニ、エビ等)、頭足類(イカ、タコ)、貝類など多くの海産物が含まれています。
また、選定するにあたり水揚げ量や魚の価格は関係なく、マイナーな魚や養殖魚もプライドフィッシュの選定範囲です。プライドフィッシュでは各都道府県から春夏秋冬ごとに1種ずつ全4種を選定、これを4年間分選定することによって、1都道府県あたり最大で16種のプライドフィッシュを選定します。
2023年12月現在では、289ものプライドフィッシュが公開されています。選定されている数は都道府県によってまちまちであり、少ない地域ではまだ数種程度です。今後、どのような海産物が選定されていくのか楽しみですね。
プライドフィッシュ公式サイトでは、各都道府県のプライドフィッシュの基本情報はもちろんのこと、食べ方から歴史をまとめたプライドストーリー、プライドフィッシュを取り扱っている飲食店の情報を発信しています(プライドフィッシュ公式サイト)。
他にも本物の水産物の価値を知ってもらうことを目的に、JF全漁連は各地の漁協が選定したプライドフィッシュをもとにPR活動やイベントの開催も行っています。
プライドフィッシュの選定条件
1都道府県につき最大で16種まで選定されるプライドフィッシュですが、すべての魚がプライドフィッシュになれる訳ではありません。プライドフィッシュとして選定されるにはいくつかの条件があります。
2. 地元で水揚げされたものであること
3. 旬を明確にした魚であること
4. 各会員が独自に設けている基準(サイズ、水揚げ海域等)をクリアしている魚であること
(出典:プライドフィッシュ公式サイト)
これらすべての条件を満たした魚のみプライドフィッシュとして選定されるのです。
各地のプライドフィッシュ
では、実際にはどのような魚がプライドフィッシュに選定されているのでしょうか? 具体的な例をいくつかご紹介します。
北海道のごっこ
「ごっこ」は主に北海道で漁獲のある魚です。
正式名称をホテイウオといいダンゴウオ科に属します。郷土料理である「ごっこ汁」は北海道の冬の味覚としられており、函館のごっこは関東にも出荷されています。
岡山県のさっぱ(ままかり)
「ままかり」は岡山県での呼び方で、正式名称はサッパという魚です。
サッパは大きさはせいぜい15センチ程の小型魚で、岡山県では「まんま(飯)を隣の家へ借りに行く程おいしい」ことから「ままかり」と呼ばれるようになった言われています。
岡山県では古くからサッパを食べており、秋頃にはサッパを狙った漁業が夏から秋晩にかけて盛んになります。
秋田県のハタハタ
ハタハタは20~30センチ程のになる海水魚で、秋田県では冬のプライドフィッシュに選定されている他、県魚にも選ばれています。海が荒れ雷が鳴る時期に獲れることから別名「カミナリウオ」とも呼ばれています。
秋田県には「しょっつる鍋」や「ハタハタ寿司」などハタハタを使った様々な郷土料理が伝承されています。
愛媛県の愛育フィッシュみかん鯛
みかんと養殖マダイの生産量が全国1位の愛媛県では、養殖餌にみかんを配合して育てる「みかん魚」がプライドフィッシュに選定されています。
みかんに含まれるリモネンが生臭さを減らす効果を持っており、魚が苦手な方でも食べやすいと評判の魚でもあるのです。
宮崎県のメヒカリ
メヒカリは深海に生息する小魚で、主に底引き網で多獲されます。
かつては雑魚扱いでしたが、脂と旨味を多く含んだ身と高い栄養価が評価され、今では食用として人気があります。
富山県のフクラギ
富山県では体長30~40センチのブリをフクラギと呼びます。
フクラギは漢字で「福来来」と書くことから福を呼ぶ魚として親しまれており、秋に旬を迎えるフクラギは絶品だそうです。
鹿児島県のキビナゴ
キビナゴは鹿児島県南部の方言で帯(キビ)小魚(ナゴ)を意味し、それがそのまま標準和名になりました。
小魚でありながら旨味が強く、鮮度の良いものが味わえるのは産地の特権でしょう。
今回ご紹介したプライドフィッシュはごく一部であり日本各地に様々なプライドフィッシュが存在します。旅先でプライドフィッシュ公式サイトを見つつ、その地域の魚料理を食べてみるのもいいかもしれませんね。
(サカナト編集部)