日本では、全国で様々な海産物が養殖されています。特にブリ・マダイ・カンパチの生産量は多く、生産量が天然物を上回ることも少なくはありません。これらの養殖魚は国内外に流通し、私たちの近所の魚屋や市場でごく普通に見ることができます。
魚の養殖には主に南米原産のカタクチイワシ科の魚粉を主原料とした配合飼料が使われることが多いですが、最近では養殖魚にフルーツを配合した配合飼料を与えている地域もあります。
魚たちにフルーツを与えるメリットはあるのでしょうか?今回は愛媛県で養殖されている魚たちを例に紹介していきます。
愛媛県で養殖されている魚
愛媛県の気候はみかんなどの柑橘類の栽培に適しており、みかんの生産量は日本一を誇ります。そんな愛媛県ですが、実は魚の養殖も非常に盛んです。
また、栄養豊富な黒潮からの恩恵を受けやすい立地であることも、魚にとって良い環境を作り出している要因の一つと考えられています。
これらのことから愛媛県は魚の養殖量が日本一であり、特にブリ、マダイ、シマアジの養殖が盛んに行われています。愛媛県のマダイの生産量は全国1位、ブリの生産量は全国2位であり(「令和4年度えひめの水産統計」令和2年度確定値)、マダイの2006年以降の生産数は国内生産数の半数以上を占めています。(愛媛県 https://www.pref.ehime.jp/h37100/suisan_okoku_ehime/fish_madai.html)
さらに、平成5年にマダイが愛媛県の「県の魚」に指定されるなど、愛媛県はみかんだけではなくマダイの一大産地としても知られることになりました。
愛媛県は養殖魚の餌にみかんを配合している
みかんと養殖魚の生産量全国1位の愛媛県では、養殖餌にみかんを配合した餌で育てる「みかん魚」が養殖されています。特に有名なのは「みかん鯛」、「みかんブリ」、「みかんサーモン」で、これらは小売店で販売されているほか、大手回転すしチェーン店で提供されたこともあります。
「みかん魚」のはじまりは、愛媛県でみかんジュースを生産する際に大量に廃棄される「みかんの搾りかす」の有効活用でした。
元々、魚には独特な匂い(生臭さ)があることや、ブリなどの青魚で血合いの色が変わりやすいことなどが課題でした。そんな中、研究の結果、みかんに含まれるリモネンには生臭さを減らす効果、ポリフェノールには血合いの変色を抑える効果があることが判明。さらには、魚にみかんの風味を加えることにも成功しました。
「生臭さが苦手な人でも食べられる」と子どもや女性からも好評だったといいます。また、「みかん魚」をブランド化し養殖魚に新たな付加価値を付けることにも成功しました。
大分県でも養殖されている<フルーツ魚>
愛媛県のマダイやブリのように餌に柑橘類などのフルーツを配合して育てた養殖魚は、「フルーツ魚」または「フルーティーフィッシュ」と呼ばれます。
日本各地で様々な「フルーティーフィッシュ」が養殖されていますが、愛媛県とは豊後水道(ぶんごすいどう)を横断した位置にある大分県では、「かぼすヒラメ」というブランド魚が養殖されています。
愛媛県同様にリアス式海岸が発達した大分県の海岸では養殖業が盛んであり、ヒラメの生産量は日本一を誇ります(The おおいたhttps://theoita.com/)。大分県ではかぼすの生産量も日本一であり、「かぼすヒラメ」は名前の通り、餌に大分県のかぼすを配合して育てた養殖ヒラメです(餌に1パーセントのかぼす果汁を配合)。
「かぼすヒラメ」の特徴はさっぱりとした味わいと甘み、肝やえんがわ(ヒラメの背ビレ・臀ビレの筋肉、カレイの仲間はえんがわが発達する)に独特な臭みが少ないこと、鮮度の持ちがよいことです。
そのほか「かぼすブリ」も養殖されており、「かぼすヒラメ」と共に大分県の<プライドフィッシュ>(全国漁業協同組合連合会のプロジェクトで地元漁師が春夏秋冬ごとに選んだ本当に美味しい魚)になっています。
愛媛県や大分県以外でも「フルーティーフィッシュ」は養殖されています。魚価の低下、魚離れ、天然魚の漁獲高の低下などの問題がある中、こういった魚たちの需要はますます高まるのではないでしょうか。
(サカナト編集部)