クサアジという魚は一般にはあまり知られていませんが、平べったい丸い体をもち、体側に暗色の横帯が入る姿からアジの仲間のようにも見えますが、実は全く異なるグループの魚とされます。
このクサアジの正体は? そして美味しい魚なのでしょうか?
今回はクサアジについてご紹介します。
クサアジってどんな魚?
クサアジ(学名 Velifer hypselopterus)は名前に「アジ」とありますが、アジ科の魚ではありません。体側にはアジ科の多くの種の特徴である「ぜんご」(稜鱗)もなく、臀鰭の遊離した2棘もありません。
それでもクサアジは平べったく丸い体に暗色の横帯が入り、アジ科のカイワリの仲間あたりと勘違いされることがあるかもしれません。
背鰭と臀鰭は非常に大きく広がり格好いいものです。背鰭は2棘30~34軟条でどれか1本の鰭条が著しく長く伸びるということはありません。全長は35センチメートルほどになります。
分布域は青森県牛滝、宮城県南三陸から九州南部までの太平洋岸、佐渡、島根県~九州西岸の日本海・東シナ海岸、愛媛県宇和海などからの記録があります。
海外では東シナ海からフィリピン、オーストラリアを経てインド洋、南アフリカにまで達しますが局所的なようで数もあまり多くはありません。なお、学名を命名するための標本が採集された産地「基産地」は長崎となっています。
クサアジの口が伸びる仕組み
クサアジの特徴のひとつは、口をよく伸ばすことができるということです。
口を伸ばすことができる魚といえばヒイラギなど色々いますが、クサアジの口の伸ばし方はほかの魚とは大きく異なっています。
口を伸ばすことができる魚の多くは前上顎骨を動かし、主上顎骨は動いてもごくわずかとされますが、クサアジの場合は主上顎骨が前方に動きます。またアカマンボウについても同様の伸ばし方をするとされています。
クサアジの食性は残念ながらよくわかっていないのですが、底生の小動物を捕食しているものと思われます。伸縮自在の口で餌を吸い込むようにして捕食するのかもしれません。
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