インド~太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しているアジ科の代表的な種がギンガメアジです。このギンガメアジは主に幼魚が九州以北の沿岸でも見られ、夏の終わりから秋にかけては釣りの対象魚として親しまれます。
今回はギンガメアジについてご紹介します。
ギンガメアジはアジ科の大型種
ギンガメアジCaranx sexfasciatusはアジ科ギンガメアジ属の魚。成魚は基本的に海に生息していますが、幼魚は河川をさかのぼることでも知られています。
形態的には上顎に歯があり、眼には脂瞼があり、胸部は完全に鱗に覆われ、第一背鰭は8棘で棘間に鰭膜があり、頭部背面は凹まない、稜鱗は黒ずむなどの特徴を有しています。
日本にすむ他の多くのアジ科魚類と見分けられます。全長60センチメートルに達するアジ科の大型種です。
ギンガメアジ属 Caranx
ギンガメアジが含まれるギンガメアジ属は三大洋の熱帯・亜熱帯海域を中心とした分布をもち、大型になる種を多く含んでいます。
過去いくつもの種が記載されてきましたが、今日においても有効なものは19種。その19種のうち日本からはギンガメアジ、ミナミギンガメアジ、カスミアジ、オニヒラアジ、イトウオニヒラアジ、ロウニンアジ、カッポレの計7種が知られています。
属の標準和名にもなっているギンガメアジは、この中でももっとも普通に見られる種といえるでしょう。
ギンガメアジはほかのギンガメアジ属魚類とは体側にある稜鱗(りょうりん/通称:ぜんご・ぜいご)が黒ずむことにより見分けることができます。
たとえば同じギンガメアジ属のミナミギンガメアジやオニヒラアジといった種は、稜鱗が黒ずむようなことはなく、銀色が綺麗です。
またカスミアジなどは体側に黒色の小斑点が見られますが(ただしカスミアジの幼魚には斑点がない)、ギンガメアジの体側にはほとんど黒色斑は見られず、体側に黒色の横帯が入ったりします(とくに幼魚)。
ギンガメアジの学名のうち種小名のsexfasciatusのうちsexはラテン語で「6」、fasciatusは「帯」を意味します。
ギンガメアジのすみかはサンゴ礁?
ギンガメアジは大きくなると外洋に面したサンゴ礁に見られるようになり、大きなトルネード様の群を形成することがあり、ダイバーに人気の魚となります。
しかしながら幼魚は浅い岩礁や砂地、河川河口域にも見られ、むしろサンゴ礁よりもそういう場所のほうに多いのではないか? と筆者は考えます。また河川をさかのぼることもしばしばあり、四国の四万十川では河口から70キロもさかのぼることもあるとされています。
分布域は広く、インド~汎太平洋域の熱帯・亜熱帯に見られます。幼魚・若魚は関東近辺でも夏の終わりから秋にかけてその姿を見ることができますが、冬になり水温が低下すると死んでしまう、いわゆる「死滅回遊魚」です。
冬には水温の低下、または餌の不足により弱ってふらふらになり沈んでいくギンガメアジの姿を見ることもあります。ただし、発電所などの温排水がある場所などでは冬にも見られることがあるようです。
高知県などでは冬季も死滅せずに越冬しているようですが、宇和海を北上し宇和島まで来ると越冬することはできないかもしれません。先述のふらふらになり沈んでいくというのは、宇和島の河川でみたギンガメアジです。
釣り魚としてのギンガメアジ
私がこの魅力的なアジを初めて手に取ったのは2001年の沖縄旅行でのこと。国営沖縄記念公園にほど近い漁港でサビキ釣りをしていると強い引きがあり、ギンガメアジが釣れたのでした。
このときは沖縄らしい魚はほとんど釣れていなかったので、初めての沖縄らしい海水魚で嬉しかったものです。当時は福岡県に居住していて、玄界灘(九州北西部の海域)ではギンガメアジは見たことがなかったのでした。
次にギンガメアジと出会ったのはそれから5年後。高知県南西部の大月町というところの漁港で、サビキ釣りをしていたらギンガメアジの幼魚が入れ食いとなったことがあったのです。
このときはギンガメアジを中心にカスミアジなども釣れ、20数匹を刺身や唐揚げなどにしかなり美味しかったのでした。
一般的にはギンガメアジやロウニンアジ、カスミアジなどの幼魚は「めっき」と呼ばれ、ルアーで狙うことが多いです。しかし私はルアー釣りをすることはほとんどないので、オキアミを餌に小さなサヨリ針などで狙うことが多いです。
竿やリールも小物用のものを使っているので、「めっき」とよばれるサイズであっても侮れないファイトを見せてくれて楽しかったです。
なお、「めっき」という名称について、和歌山県や四国、九州北部などではカイワリについても「めっき」または「めっきあじ」と呼ぶこともあるので注意が必要です。
昔はギンガメアジはカイワリと同じカイワリ属とされていましたが、現在はギンガメアジとカイワリは異なる属とみなされています。
「めっき」という名称の由来は体表の光沢が「銀メッキ」のように見えることからきていますが、標準和名ギンガメアジも同様に「銀紙を貼ったように輝くばかりに美しい」というところからついたようです。
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