ウツボの仲間は、その独特な見た目や格好良さから、近年アクアリストに人気の魚となっています。
野性味あふれる、獰猛な性格といかつい顔をしたものから、かわいらしい顔とおとなしめの性格をしたものまで色々な種が知られており、魅力的な魚たちです。今回はこの<ウツボの仲間>の飼育基礎をご紹介します。
なお、ここでは海水魚の飼育について扱っています。海水魚は真水(淡水)で飼育することはできません。また海水魚飼育の設備は淡水魚とは異なるものが必要になります。詳しくは専門誌などをご参照ください。
もちろん、一度飼育した魚は、海や川へ逃がすようなことのないようにしましょう。
また「ウツボ」という名称は、種標準和名ウツボを指す場合と、ウツボ科魚類全般を指すことがあります。ここでは原則「ウツボ」とした場合は種の標準和名ウツボを指し、ウツボ科魚類全般については「ウツボの仲間」という言葉を使用します。
ウツボ科魚類の特徴
ウツボ科魚類はいずれも、ヘビのような細長い体をしており、一見爬虫類のようですが、ウナギ目にふくまれる魚類のいちグループです。

爬虫類のヘビの仲間のように見えますが、外見上鱗はなく、背鰭を持っているため容易に識別できます。
また海洋に見られるヘビの仲間、爬虫類のウミヘビはどの種も肺呼吸をしますが、ウツボの仲間は魚類であり、鰓呼吸をします。

一方、ほかのウナギ目魚類に含まれる種とは、背鰭・臀鰭につながった尾鰭があること、側線孔は頭部付近にのみあり、体側にはみられないこと、後鼻孔は眼前方の背側にあることなどで見分けられます。
しかし、なんといっても胸鰭がないことによって、ほかの多くのウナギ目魚類と見分けることができるでしょう(ただしウツボ科以外にも胸鰭がない種がわずかにおり、その場合はほかの特徴も組み合わせる必要がある)。

ウツボ科魚類は三大洋の熱帯から温帯域に生息しており、その種は200種をこえます。
この科の魚の特徴といえば「歯」を思い浮かべる方も多いと思いますが、大部分の種は鋭い歯を有しているものの、種によっては臼歯のような歯を持つ種も知られています。どの種も動物食性で小魚やタコ、イカなどを食べているほか、甲殻類を好むものもいます。
ウツボ科は大きく分けて2つのグループ
ウツボ科は大きくふたつのグループに分けられます。キカイウツボ亜科とウツボ亜科です。
キカイウツボ亜科のなかにはキカイウツボ属やタカマユウツボ属、アミキカイウツボ属などが含まれます。一方、ウツボ亜科にはウツボ属やアラシウツボ属、コケウツボ属、ハナヒゲウツボ属などが含まれます。
背鰭・臀鰭は体の尾端付近にのみあるのがキカイウツボ亜科、背鰭は肛門より前方にあり、臀鰭は肛門の後方から始まるのがウツボ亜科で、区別は容易です。

一般的にアクアリウムトレードに乗るのはほとんどがウツボ亜科のほうですが、キカイウツボ亜科の種もあまり多くはないものの、観賞魚として販売されることがあります。
キカイウツボ亜科の魚は潮だまりに見られるアミキカイウツボが代表的な種で、この種は30センチほどということでキカイウツボの仲間は小型種というイメージがありますが、キカイウツボ亜科のChannomuraena vittataは全長1.5メートル近くになります。
この大型種は標準和名はついていないものの、日本でも漁獲され、沖縄美ら海水族館で展示されたこともあり、仮の和名もつけられました。今後の研究に期待したいところです。
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