ゼニガタアザラシは、日本沿岸に定住し繁殖する唯一のアザラシです。
頭がよく、色々な芸を覚えてくれるので、水族館などでも人気があります。
日本では11箇所の水族館や動物園で飼育・展示されているゼニガタアザラシ。どんな生き物なのでしょうか。
ゼニガタアザラシ(学名:Phoca vitulina)は北海道在住
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ゼニガタアザラシは、北太平洋と北大西洋の沿岸に広く分布するアザラシ。食肉目(ネコ目)アザラシ科ゴマフアザラシ属に属しています。
ゼニガタアザラシには5種類の亜種があり、そのうちの1種(P.v.stejnegeri)が北海道の襟裳岬に定住しています。日本に定住して繁殖する唯一の海獣です。
日本では準絶滅危惧種 NT(現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種)に指定されています。
体長は1.8メートル前後、体重150キロ前後まで成長しますが、地域や亜種によって大きさは異なるそうです。
氷上で繁殖するゴマフアザラシとは非常に近い種ですが、岩場で繁殖する点が大きく異なります。
<ゼニガタアザラシ>はコインのような模様が特徴
ゼニガタアザラシの大きな特徴は、なんといっても体全体に目立つまだら模様。コインのような模様(銭の形)であることから、ゼニガタアザラシという和名がつけられました。
黒い毛でおおわれた全身に寛永通宝のような白い模様があると、まるで迷彩色のよう。敵に見つかりにくいように進化したのでしょうか。
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また、人懐っこいのも特徴です。近くに行くと、こちらを観察しています。多くの見物客がいると、泳ぎながらじ~っとこちらを眺めてくるので面白いです。
「今日もたくさん来てくれたので、頑張ろう!」とか考えているのかもしれません……。
寛永通宝の砂絵をイメージした展示も
香川県高松市にある新屋島水族館のゼニガタアザラシの展示は変わっています。
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アクリル水槽で世界トップクラスの技術を持つNIPPURA株式会社(香川県木田郡三木町)が作った、同じ香川県観音寺市にある寛永通宝の砂絵をイメージした水槽を使っているのです。
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<ゼニガタアザラシ>はすごい芸達者!
新屋島水族館では、ゼニガタアザラシが傘持ち芸であったり、相合傘でよりそう姿を見せたりなど一生懸命に披露してくれます。
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観客が写真をたくさん撮れるよう、かなりの長時間、立ったままポージングしてくれる姿には感動すら覚えます。
ゼニガタアザラシを展示している水族館は日本に11館
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ゼニガタアザラシは、日本にも定住し繁殖しているとはいえ、あまり数は多くありません。そのため、展示している水族館も限られます。
2025年2月現在、ゼニガタアザラシを飼育展示している国内の水族館・動物園は、おたる水族館(北海道小樽市)、室蘭民報みんなの水族館(市立室蘭水族館/北海道室蘭市)、登別マリンパークニクス(北海道登別市)、円山動物園(北海道札幌市)、釧路市動物園(北海道釧路市)、浅虫水族館(青森県青森市)、鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)、上野動物園(東京都台東区)、八景島シーパラダイス(神奈川県横浜市)、城崎マリンワールド(兵庫県豊岡市)、新屋島水族館(香川県高松市)の11か所です。
お出かけや旅行で近くに行く際は、ぜひゼニガタアザラシをじっくり観察してみてください。気付けばこちらが観察されている緊張感が味わえます。
なお、新屋島水族館はリニューアル工事のため、2025年4月7日より2年ほど休館になります。傘芸を見るのであれば、それまでに行きましょう。
(サカナトライター:額田善之)