福井県若狭町にある三方湖に伝わる伝統漁法、たたき網漁。一体どのような漁なのでしょうか。
この記事ではたたき網漁や、たたき網漁が行われている三方五湖について紹介します。
水面を叩いて網へ魚を追う漁法
たたき網漁は、福井県美浜町と若狭町にまたがる三方五湖のひとつ、三方湖に伝わる伝統漁法です。
冬の三方湖の水温は5度近くまで下がります。すると魚たちは動けなくなり、湖底に留まります。たたき網漁では、水面を竹竿でたたき、その音や振動によって湖底で活性が低くなっているフナやコイを驚かせて刺し網に追い込み漁獲します。
この漁法は、世界的にも珍しい、三方湖ならではの漁法です。
三方湖は水深が2.5メートル程と浅く、湖に流れ込む川から流れついた木竹が湖底に堆積します。湖にすむ魚類たちの生息地となりますが、漁業者にとっては障害物となり、湖底に網を引きずる地引網のような漁法は向いていません。そのため、水面をたたいて魚を驚かせ、刺し網に追い込む方法が考案されました。
福井県若狭町では、「たたく」の方言からかち網漁とも呼ばれます。11月中旬から12月初め頃から始まり、3月末で終わるため、たたき網漁の風景は冬の風物詩となっています。
たたき網漁のターゲットは?
たたき網漁では、主にフナやコイを漁獲します。三方湖に流入するはす川の河口付近で発掘された縄文遺跡からも、多数のフナやコイの骨が見つかったそう。湖にすむ魚たちは、縄文時代から食料とされてきたことがわかります。
たたき網漁で漁獲されたフナやコイは、刺身や煮つけ、鯉こくなどで楽しまれています。特に刺身は甘みが特徴的で、地元では祝いの席を中心によく食べられているとか。
これらは他地域へ流通せず、地元でのみ食べることができます。これが乱獲の防止にもなり、資源確保にもつながっていると考えられています。
ラムサール条約に登録された三方五湖
美浜町と若狭町にまたがる三方五湖は、平成13年12月に国の「日本の重要湿地500」に選定されています。平成17年11月には、アフリカのウガンダ共和国で開催された第9回ラムサール条約締約国会議の初日に、三方五湖がラムサール条約湿地に登録されました(ラムサール条約湿地「三方五湖」-福井県)。
三方五湖はそれぞれ5つの湖の塩分濃度が異なっており、多様な魚類が生息している湿地です。そのため、ラムサール条約の国際的な登録基準「固有な種類の種や科が相当な割合を支えている湿地」、「魚類の重要な食物源であり、または、産卵場、稚魚の成育場」という基準に該当すると認められました。
三方湖は国際的に重要であると認められた湿地のひとつであり、伝統漁法が残る貴重な湖。こういった環境を自ら学び、次の世代まで引き継いでいきたいですね。
(サカナト編集部)