水族館でもおなじみのミノカサゴ。ピンクがかった体にヒラヒラとした豪華なヒレを揺らしながら泳ぐ、優美な姿に魅了された人も多いのではないでしょうか。
そんなミノカサゴは様々な種類が存在しますが、なかでも有名な一つにハナミノカサゴがいます。
ハナミノカサゴの生態
日本では太平洋沿岸に多く生息しているハナミノカサゴ。水深1メートルの浅瀬から50メートル以上の深場まで幅広く生息しています。
体長は30センチ前後(最大で40センチ以上になる)と、かなり存在感を感じる魚。夜行性で、昼間は岩陰や珊瑚の間などで浮遊するように泳いでいますが、ヒレに強い毒を持っているので触れないように注意が必要です。
赤・白・黒のしま模様が全身に入っており、薄ピンク色の体色。尾びれに黒い斑点があるのが特徴です。
敵から身を守るためにカモフラージュする<皮弁>

魚には、皮ふが変化した毛状突起(もうじょうとっき)である「皮弁」を持つものがいます。形状は様々で、細長いものもあれば葉っぱのような形をしたものもあります。
これらは主に、敵から身を守るために海藻などにカモフラージュするためのものですが、中にはアンコウの“ちょうちん”のように獲物をおびき寄せるための皮弁もあります。
ハナミノカサゴはというと、カモフラージュのため、目の上に葉っぱのような皮弁を持ちます。ツノのようにも見える皮弁は、上眼瞼皮弁(じょうがんけんひべん)と呼びます。
ハナミノカサゴの皮弁の有無の謎
しかし、ハナミノカサゴには上眼瞼皮弁がある個体と無い個体がいるのです。
海で出会ったハナミノカサゴを観察していてわかったことは、砂地にいる個体には上眼瞼皮弁があることが多く、岩場によくいる個体にはほとんど無いということ。そして、幼魚だと思われる小さな個体には皮弁があることが多いと感じました。
また、兄弟でも皮弁の有無の違いがあるといい、皮弁の有無には親からの遺伝も関連しているそうです。
魚にも“お母さん似”と“お父さん似”がいるということですね。

一部の研究では、皮弁はカモフラージュのみならず、水流を感じる感覚器官の役割の可能性も指摘されているようです。
ダイバーや釣り人の皆さんは、海で出会ったり釣り上げたりした際はぜひ観察してみてください。ただし、毒があるので、観察する際はヒレに要注意です。
また、水族館でも皮弁の有無を確認することができます。じっくりと観察してみてください。
(サカナトライター:shell)