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葛西海浜公園の干潟で出会った<ヤミヨキセワタ> 闇夜のように暗い不思議な生きもの?

都心から気軽に行ける葛西海浜公園は、誰でも海の生き物と触れあうことができる貴重な場所。大潮の時には見渡す限り干潟が広がります。

そんな恵まれた自然環境に長く親しんでいる私は、時間を見つけては干潟でタモ網を相棒に水辺の生き物との出会いを楽しみにしています。

そしてタモ網遊びをしているときは、ひとすくいひとすくいが未だ見ぬ生き物との出会いに凝りもせず毎回ワクワクするのです。

“すくった網の中に動くものを見つける瞬間”ほど心踊る時間は他にあまりありません。

干潟で出会った謎の黒い生き物

そんなある日のひとすくいに、1~2センチに満たない大きさの黒くて小さく、なんとなくマリモにも見えなくない物体を見つけたときはとても驚きました。

初めましてのその物体が果たして何に属する生きものかすらも検討がつかず、頭の中はビックリマークとハテナマークで大渋滞が起きてしまったのでした。

漆黒の丸いなにか(撮影:海渡里子)

干潟でよく観察することができる魚でも貝でもカニでもないその生き物の名前は、ヤミヨキセワタという生きものでした。

名前が分かったあとでも、聞きなれない音の並びに戸惑うばかり。昼間なのに闇夜?

触ったら潰れてしまいそうな程に柔らかいので、慎重に手に乗せてまじまじと観察してみます。

黒いだけでなく艶のある体表はとても綺麗で魅力があり、素早く動こうともしないおとなしいその様子も可愛いくてひと目で虜になってしまったのでした。

かわいい見た目で実は肉食のヤミヨキセワタ

ヤミヨキセワタという不思議な名前のこの生き物は実は巻貝の仲間で、ウミウシの形をした生き物。貝と言っても、殻が体内にあるので外からはその構造は見ることができません。

国内では千葉県小櫃川河口や三浦半島周辺をはじめ、北海道から本州にかけての潮下帯の砂や泥底に生息しているようです。

体はみずから出す粘液で覆われていて、普段は干潟の表面を浅く潜りながら移動して獲物を探しています。目も口もさっぱりどこにあるのやら想像もつかないのでプランクトンでも濾しとって栄養を得ているのかと思いきや、実は肉食干潟では捕食者となり多毛類などを獲物としているようです。

「音も無く静かに移動しながら獲物を狙う肉食巻貝」と聞くと、なんだか少し怖いイメージも湧いてきてしまいます。ただ、日本のいくつかの地域では絶滅が危惧されているようです。

ヤミヨキセワタを飼育してみたものの……

ヤミヨキセワタ(撮影:海渡里子)

1匹だけ採集したヤミヨキセワタを観察目的で水槽ケースで飼ってみたところ、残念ながら翌日には黒さも失いプカプカと浮いてしまいました。

海では波にもまれているだろうに、人の飼育のなかではあっという間に命が続かなくなってしまう……。あらためて、大きな海に生息する無数の小さな生き物に思いを馳せる出会いと経験になりました。

地上と水辺をつなぐ波打ち際で楽しめるタモ網遊び。ぜひとも網に入ったひとつひとつに新しい発見を期待して全集中で観察してみましょう。

(サカナトライター:海渡里子)

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海渡里子

魚、鳥、虫(蜘蛛も!)などに特に心を惹かれることが多いので、ひとつでも多くのワクワクや感動を伝えていきたいです。日本全国の水族館を制覇することが目下人生の目標。

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