カニは好きですか?
「食べるのは好きだけど、生きている姿を見たことはない」という人も多いのではないでしょうか。
実は、鳥取県鳥取市に“カニにフィーチャーした水族館”があるのです。
その名も「とっとり賀露かにっこ館」。実際に行ってきた様子をレポートします。
いざ、<とっとり賀露かにっこ館>へ!
とっとり賀露かにっこ館は、鳥取港(賀露港)の近くにある「海鮮市場かろいち」という道の駅のようなスポットに隣接する形で設置されています。
すぐ隣が鳥取砂丘コナン空港になっていて、アクセスは抜群。筆者は今回、ドライブがてら訪問しましたが、空港から歩いて20分ほどでも行けるようです。
公園の一角に佇んでいるような感じで、目の前の広い芝生で遊んでいる子どもたちが沢山いました。入館料も無料なので、気軽に楽しめるのも良いですね。

入館すると大きなふれあい水槽が
入館すると早速、ふれあい水槽が登場します。大きめの生簀が2台ほどあり、柵で囲われています。
ふれあい水槽は料金制で、ヒラメにエサをあげることができるなど体験可能なプールになっています。

今回はパスしてしまったので中には入れませんでしたが、遠目から見ても結構な数の生き物がプールの中にいました。気になる人はぜひふれあい体験もしてみてください。
<鳥取の魚水槽>には近海の魚を展示
ふれあいプールの横に設置された水槽が気になりました。ドンッと構える大きめのこちらの水槽は、<鳥取の魚水槽>です。

マダイ・スズキ・アカエイ・アオハタ・ドチザメなど……近海の魚が展示されています。水槽の周りをぐるっと歩いて見ることができるので、間近に観察できました。
「タイってこんなに大きくなるの?」など、他のお客さんも盛り上がって鑑賞している様子が見受けられました。

この水槽を取り囲むように熱帯魚の展示もありました。カニ以外も色々と見られて面白いです。

ここで、『カニのふしぎまるわかりブック』なるものを発見。カニの魅力が数ページに渡ってみっちり紹介されていて、読みながら館内を歩くことで、非常に勉強になりました。
バックヤードが間近に見れる!
順路を進むと、バックヤードコーナーへ。スタッフさんが作業している姿がばっちり見えました。

他の水族館でも、バックヤードツアーがあったり、バックヤードエリアがガラス張りで見られるようなところがあったりしますが、ここは隔てるものが何もないので、聞き耳を立てているとスタッフさんの会話も聞こえてくるのが新鮮です。
バックヤードの前には水槽がいくつかあります。「かにっこ館」ということで、特に気になったのがクロベンケイガニです。

たとえば東京では荒川や多摩川にもいるなど、日本各地で頻繁に見られるそこまで珍しいカニではないですが、こうして展示されているのを改めて見てみると、可愛いなあとしみじみ。水槽には鳥取県産との掲示もありました。
鳥取県はブランド蟹である「松葉がに」など“海産物のカニ”のイメージが強いですが、標高1729メートルの「大山(だいせん)」をはじめとした山間部も自然豊かな自然に溢れています。淡水域も魅力たっぷりなのではないでしょうか。
いよいよ<カニ展示エリア>へ! 充実の解説コーナー
バックヤードコーナーを抜けると、カニたちが所狭しと並ぶ<カニ展示エリア>へやってきました。
見渡す限り、全てカニの展示。カニ好きにはたまらない空間です。

パネル解説を交えながら展示をみていきます。この水族館、解説パネルがかなり充実していて、カニの生態についてとことん学べます。
筆者が特に驚いたのが、カニの呼吸について。そもそも考えたことがなかったので、解説を読んで衝撃を受けました。

カニはハサミの付け根から水を吸い込んで、そこからエラで呼吸。水生であれ陸生であれ、水から酸素を得ていることは変わらず、陸生のカニは呼吸用の水を循環させて使っているので水が古くなると粘りが出て、カニの「泡ふき」が起きるのだとか……。
カニ……凄い体の仕組みをしているんだね……。知らないことが多くて勉強になります。
子どもも楽しめるクイズ
他にも、展示エリアにはクイズがいくつかあり、子どもも楽しめる内容だと感じました。

特に、抜け殻と剥製を見極めるクイズはかなりの難問。筆者はなんとかすべて正解できましたが、剝製との見分けが難しいほど綺麗に脱皮できるのか……と驚きます。
そもそも、こんなにも複数種のカニの甲羅を見れる場所もないので貴重な展示です。

充実の解説に溢れている館内には、「飼育の質問ボタン」と書かれた看板がありました。ボタンを押すと飼育スタッフさんが出てきて、飼育に関する内容を相談できるそう。
子どもも大人も嬉しい仕組みで、なんてアットホームなんでしょう。近所にお住まいの方が羨ましいです。
解説や飼育展示以外にも、大量のカニグッズが並べられたコーナーもありました。

かにっこ館というだけあって、“カニ愛”が溢れています。
訪問前に「小さいですが熱量あります! 」という口コミを見かけていたのですが、まさにカニ愛を一身に浴びるような展示に圧倒されました。
ずらっと続くカニ水槽
解説パネルとともに水槽を見ていきますが、嬉しいことに水槽の数が多かったので、本記事では特に印象的だった展示を紹介します。
まずは、オオホモラ。深海性で、ホモラ類の中でも大型になる珍しいカニです。

後ろ脚にハサミを持っていることが特徴的な、いわゆる“背負う系のカニ”。この後ろ脚のハサミで何かを掴んだり背負ったりする習性があるようです。

近くで見ると、しっかりとヤギ類を握っているのが分かります。ハサミもそうですが、爪がフックのようになっており、独特でかっこいいですね。
こんなに近くで見たことはなかったので、まじまじと観察することができました。
鳥取県では「チョーコガニ」と呼ばれる<ヒラツメガニ>
次に印象に残ったのが、鳥取県で食用とされているカニの紹介。中でも気に入ったのは、ヒラツメガニです。
砂に潜ってじっとしている姿は可愛らしいですが、日本では食用ガニとして漁獲されているカニです。

「マルガニ」や「ホンダガニ」などさまざまな地域名があるのも特徴。鳥取県では「チョーコガニ」と呼ばれ、親しまれているそうですよ。カニ味噌がとても美味しいそうです。

食用ガニとして紹介されることはあまりないので、カニ名産の鳥取県ならではの展示ですね。
<タカアシガニ>の脱皮している姿を目撃!
他にもタカアシガニがいましたが、タイミングがよく、なんと脱皮している姿が見れました……!脱皮には時間がかかるので、最後まで見守ることはできませんでしたが、貴重な体験です。
カニは成長に合わせて脱皮する習性がありますが、脱皮にはかなり体力を使うらしく、途中で力尽きてしまう個体もいるそうです。貼り紙にも「カニの脱皮は命がけです」と書いてありました。

この個体が無事であることを祈ります……。
念願!「松葉がに」展示
さて、カニ展示がずらっと続く中、特別に仕切られたエリアがありました。
なんの展示かというと……「松葉がに牧場」。鳥取県といえば松葉がにが有名ということで、特別にエリアが分かれていました。

松葉がに、聞いたことがある人も多いかと思いますが、どんなカニか知っていますか?
実は松葉がにというカニの種類がいるわけではなく、山陰地方で水揚げされるズワイガニのオスのことを松葉がにと呼ぶのです。同じズワイガニでも、福井県では「越前ガニ」、丹後半島では「間人ガニ」と呼ばれるなど地域によって名前が変わります。
そんなズワイガニは、深海性のカニ。展示エリアは、若干涼しく薄暗くなっていました。

展示エリアで見たオオホモラやタカアシガニと違い、ツルツルの体表が印象的。ライトで分かりにくくなっていますが、実際の体表は茶色で、茹でると赤色に変化します。
水槽の横には、水槽と同じ温度の水が出る蛇口が設置されていました。出してみるとひんやり冷たく、驚くお客さんが沢山いました。
貴重なズワイガニのメスの展示も
特産物・松葉がにを見ることができてほっこりしたのも束の間、隣にはさらに貴重な展示がありました。ズワイガニのメスです。
メスは卵を持っているため、水産資源の管理のためにも禁漁時期が設けられています。漁を行う際のカゴ網にも、身体の小さなメスは逃げることができるような工夫がされていたりと、徹底的なルールによる規制がなされています。
そんな中、とっとり賀露かにっこ館では水産試験場の許可を得て、調査のために捕獲したカニを特別に展示。確かに先ほど見たオスよりはやや小ぶりな印象で、脚もほっそりしています。
メスは産卵にエネルギーを使うため、身もあまりつかず、産卵後は脱皮もしなくなるそう。市場では1年のうち数ヶ月だけ勢子ガニとして出回りますが、数は少なくかなりレア。生きている姿を見れるのはかなり貴重ですね。
鳥取へ行ったらぜひ<とっとり賀露かにっこ館>へ!
展示全てを紹介しきれませんでしたが、ワンフロアにずらっとカニ展示が並ぶ展示はまさに圧巻です。
とっとり賀露かにっこ館の近くには海鮮市場もありますので、観光も兼ねてぜひ遊びに行ってみてください!
(サカナトライター:moka)