「タコとイカって、何がちがうの?」
そんな疑問を投げかけられたとき、「足の数が違うよ! タコは8本で、イカは10本」……という以外にこの2種の生き物の違いを詳しく説明できますか?
この疑問について、子どもにも大人にもわかりやすく教えてくれるのが、絵本『タコとイカはどうちがう?』(ポプラ社)です。
筆者の娘が図書館で見つけて以来、親子で何度も読み返してきたお気に入りの1冊。可愛い表紙に惹かれて手に取ったものの、その中身はびっくりするほど本格的。丁寧な解説に添えられている美しい写真と可愛いイラストにも魅了されました。
水生生物好きにはたまらない最強!? トリオの執筆陣
そんな絵本『タコとイカはどうちがう?』で写真を担当しているのは峯水亮さん。水生生物好きにはおなじみの写真家さんです。
峯水さんの作品でも、特に有名なのは写真集ではないでしょうか。彼の写真は迫力がありながらも美しく、生物の繊細な姿が印象的に切り取られています。芸術的要素も高いため、水生生物好きに限らず多くのファンを魅了しているカメラマンです。
文章を書いているのは作家の池田菜津美さん。近年、水生生物だけに限らず多くの生き物絵本を執筆している方です。
その文章は専門的な内容でありながらも、とても読みやすいのが特徴。子どもにも大人にもスッと入ってくる説明は、「難しいことを簡単に伝える」お手本のよう。小さな子どもと読むには最高の語り手です。
そして監修を手がけているのは、刊行当時は沖縄科学技術大学院大学研究員だった杉本親要さん。現在は慶應義塾大学法学部生物学教室に所属するこの方、なんとタコとイカを研究すること15年以上というタコイカのスペシャリストです。
そんな最強執筆陣が揃ったこの絵本は、しっかりと子ども向けテイストでありながら、きちんとした科学的な裏付けがある内容なのです。
タコとイカは同じ頭足類……だけど?
詳しい解説で体のつくりや生態にも言及しているのに、とにかく分かりやすい内容なのがこの絵本の魅力。クスリと笑える可愛らしいイラストもたまりません。
さて、実際タコもイカも「頭足類」という同じ分類に属していますが、その生態には驚くほどたくさんの違いがあります。この絵本では、そんな違いをひとつずつ丁寧に、しかも図解や写真を使って楽しく紹介しています。

たとえば、イカは水をジェットのように噴き出して泳ぐのが得意で、広い海を群れで移動します。
一方のタコは、海底を歩いたり岩陰に隠れながら、特定の住処を持つ種類が多い「ひとり暮らし」タイプ。

広い海を自由に泳ぎ回るアクティブなイカ。おうち時間をしっかりと持っているタコ。
似た生き物でも、こんなにライフスタイルが違うんだと驚かされます。
子どもと一緒に楽しみながら 生物について学べるおすすめの絵本
絵本「タコとイカはどうちがう?」は、読み聞かせにもひとり読みにもおすすめできる科学絵本です。幼児から小学生まで夢中になれる内容で、読むたびに新しい発見がありますよ。
筆者の娘はこの本を何度も図書館で借りるので、ついに自宅用にも購入しました。何度も何度も読み返しては、「タコって耳がないの?」「イカって骨があるの?」と、どんどん興味を深めています。
ちなみに2種の生物には吸盤にも違いがあります。タコの吸盤は筋肉で、イカの吸盤にはギザギザのリングがついています。
家でスルメイカを調理した際には、ついついリングを取ってこどもに見せびらかしてしまう筆者なのでした。

本書は絵本という形でありながら、図鑑に匹敵する情報量と美しさ。そして親子の「なんで?」に応えてくれるやさしい語り口の1冊です。
この絵本があれば、タコとイカの世界がぐっと身近になります。水生生物好きはもちろん、これから好きになりそうな子にもぴったりの絵本です。
ぜひ一度、手にとってみてください。
(サカナトライター:halハルカ)