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鶏卵を使わないウナギ仔魚用のオリジナル飼料を開発 <シラスウナギ>の安定生産を目指す

近畿大学水産研究所と三栄源エフ・エフ・アイ株式会社はニホンウナギの仔魚用飼料の共同開発において、鶏卵黄を含まないオリジナル飼料を用いて、100尾以上のシラスウナギ(ウナギ稚魚)を生産することに成功したと発表しました。

従来飼料では鶏卵黄を使用していましたが、供給が不安定になりがちで今も価格高騰が続いていることから、動物性原料を含まない飼料の開発に取り組んだといいます。

ウナギの完全養殖に向けた課題

日本の食文化に欠くことのできないウナギですが、近ごろは資源量が著しく減っていると言われています。

現在、ウナギは国内消費量の99%以上を養殖に依存。そして、現在ウナギ養殖に用いているのは天然のシラスウナギ(ニホンウナギの稚魚)です。

近年漁獲されるシラスウナギの量は減少傾向にあることから、育てた親魚に繁殖させ、その親から生まれた卵を成魚まで育て、さらにその成魚が産んだ卵をまた育てるという一連のプロセスをすべて人の手で行う「完全養殖」が望まれています。

(左)オリジナル飼料の給餌でシラスウナギへの変態を開始したウナギの仔魚(149日齢)、(右)オリジナル飼料等の給餌で育ったシラスウナギ(175日齢)(提供:近畿大学)

ウナギの完全養殖をめざす研究は古くから行われており、北海道大学が昭和48年に人工ふ化に成功しましたが、仔魚に適した飼料の開発が難しく、その後20年以上にわたって仔魚を成長させることができませんでした。

平成14年には、国立研究開発法人水産研究・教育機構がサメ卵やオキアミを主な原料とする飼料により、初めて仔魚からシラスウナギまでの飼育に成功。その後、平成29年には、原料の品質の安定や持続的な供給の観点から、鶏卵黄、乳タンパク室および酵素処理魚粉を主な原料とする飼料が開発され、今日まで広く使用されてきました。

しかし、依然としてシラスウナギの生残率は低く、天然のウナギに比べ成長も遅い傾向にありました。

特に、従来の飼料のひとつである鶏卵黄は鳥インフルエンザなどにより供給が不安定になりがちで、現在も価格高騰が続いています。また、給餌の際に重要となる飼料の粘性は水分の添加量で調節されており、それに応じた栄養素の選択や飼料中の濃度の調節が難しいという課題もあったといいます。

仔魚の飼育には特別な資料が必要

仔魚の飼育に使う飼料は、液体の中に個体が高濃度で分散し、ドロドロとした形状—スラリー状を保持することが不可欠だといい、この状態を維持するために、サメ卵や鶏卵黄は重要な役割を果たしてきました。

一方、サメ卵は品質と供給が不安定で、鶏卵黄も供給が不安定になることが多く、さらに価格の高騰が続いていることから、これらの動物性原料を含まない飼料の開発に取り組んだそうです。

(左)完全養殖のシラスウナギ、(右)完全養殖のウナギ(提供:近畿大学)

その結果、従来の飼料から鶏卵黄を取り除き、増粘剤の利用によって仔魚の成長ステージに応じた粘度に調整できるオリジナル飼料の開発に成功。この飼料を用いて、ウナギ仔魚を長期飼育したところ、令和6年5月にシラスウナギを獲得することができました。

さらに、今年5月末までに、100尾以上のシラスウナギ(稚魚)を生産することに成功したといいます。

今後のウナギ養殖はどうなる?

ウナギの完全養殖は、受精卵を得てシラスウナギにするまでの仔魚の間の飼育が一番難しいとされ、この期間の飼料が生残率や成長速度、シラスウナギへ変態するまでに要する日数を大きく左右します。そして、シラスウナギを得るまでには、長い期間と多大な労力、光熱費を要するといいます。

今後は、より安定したウナギ仔魚の飼育を可能にするとともに、シラスウナギへの変態をより短期間で実現する飼料の開発を目指すとのことです。

※2025年8月5日現在の情報です

(サカナト編集部)

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サカナト編集部

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