サカナをもっと好きになる

キーワードから探す

楽しむ

ちりめんじゃこからミクロなモンスターを探してみた <チリメンモンスター>5種類を紹介

とても美味しいうえに、イワシの栄養を余すところなく摂取できる“ちりめんじゃこ”。このちりめんじゃこの中に、小さな魚やタコなど、ちりめんじゃこ以外の生きものが入っていることがあります。

これらは不思議なかたちをしていることが多いことから、「チリメンモンスター」と呼ばれます。

近年では、食中毒やアレルギー対策のため、毒魚や甲殻類などの混ざりものを選別して販売しているので、市販のちりめんじゃこからチリメンモンスターを見つけるのは難しいです。

そこで今回、株式会社カネ上が販売しているチリモンを入手。この商品は、ちりめんじゃこに入ったさまざまな生きものが選別されていない商品です。このチリモンに、どんな生きものが入っているかを調査しました。

その結果、31種類の生きものを見つけることができました。

ちりめんじゃことは?

ちりめんじゃこ(提供:PhotoAC)

ちりめんじゃこは、主に2センチメートルくらいのカタクチイワシの稚魚を乾燥させた食べ物です。

目の細かい網を使って海で獲れた魚の稚魚の総称を「しらす」と呼びますが、しらすの中からカタクチイワシの稚魚などだけに選別し乾燥させたものが「ちりめんじゃこ」になります。

チリモンとは?

ちりめんじゃこにまれに入っているカタクチイワシ以外の魚や生きものは「チリメンモンスター(チリモン)」と呼ばれ、広く日本中で知られています。

ちりめんじゃことチリモン(撮影:額田善之)

代表的なチリモンとしては、エビやカニなどの甲殻類、クラゲ、フグやタイの仲間などの魚類、タツノオトシゴなどが挙げられます。

チリモンの分類方法

虫メガネとピンセット、白いお皿や使い捨ての紙皿を用意します。場合によっては黒画用紙などを下に敷くと、チリモンたちが見分けやすいですよ。

用意するもの(撮影:額田善之)

チリモンの種類を見分けるには、ネイチャーおおさか(大阪自然環境保全協会)が運営するWEBサイトチリモン図鑑を見るのがお手軽でしょう。

なお、ネイチャーおおさかでは、『海のミクロ生物の見分け方図鑑』を有料配布しているので、問い合わせて入手するのもおすすめです。とても分かりやすいので初心者でも簡単に分類できると思います。

実体顕微鏡があれば細かい部分もはっきり確認できます。ミクロの世界に興味がある人は購入を検討してみましょう。

どんなチリモンが見つかった?

分類中のチリモン達(撮影:額田善之)

今回は市販のちりめんじゃこではなく、選別時に出たカタクチイワシ以外の魚や甲殻類などが入った「チリモン」を和歌山県にある株式会社カネ上から購入しました。

子どもと2人で3日間ほどの調査と分類作業の結果、見つかった生きものは31種類でした。この中から、筆者が好きなチリモンを厳選して、5種類紹介します。

エソの仲間

エソはとてもおいしい魚ですが、鮮度がすぐに落ちてしまうこと、小骨が多く人気がないことから、市場には出回らないレア魚。特に、マエソは高級かまぼこの原料として使われるため、加工業者へ売られています。

鋭い歯と小骨が多いことが特徴のエソ(提供:PhotoAC)

筆者は福岡の砂浜でマエソ(学名:Saurida macrolepis)を釣り上げた経験がありますが、塩焼きにして食べると最高においしかったですよ。小骨が多く、下処理が大変でしたが……。

エソの幼魚(撮影:額田善之)

エソの幼魚のお腹には水玉模様のような点々が規則的に並んでいます。獰猛そうなエソとは思えない可愛らしさですね。

タコの仲間

タコは近海に多く生息する軟体動物。刺身だけでなく酢だこにしてもおいしく、たこ焼きには欠かせません。

タコの仲間の幼生(撮影:額田善之)

タコの幼生もやっぱりタコの姿をしているけど、ちょっと短足なのがとてもかわいい! ただ、ほとんど入っていませんでした。

時期によって捕獲されるチリモンの種類が変わるため、時期が合わなかったのでしょう。

ヘイケガニのゾエア幼生

ヘイケガニ(学名:Heikea japonica)は駿河湾〜九州西岸、韓国、台湾、中国南部、ベトナムの各沿岸に生息する希少なカニ。

ヘイケガニ成体のイラスト(提供:illustAC)

平家の落人の呪いで人の顔のような模様になったという伝説があるそうです。大分県では絶滅危惧II類(VU)に指定されています。

ヘイケガニのゾエア幼生(撮影:額田善之)

カニ類は、孵化後、ゾエア幼生→メガロパ幼生を経て稚ガニとなり、成体ガニへと成長しますが、このチリモンはゾエア幼生です。

恐ろしい模様があるヘイケガニの幼生とは思えないのが、変態生物の面白いところですね。

ナミノリユメエビ

ナミノリユメエビ(撮影:額田善之)

ナミノリユメエビ(学名:Lucifer intermedius)はユメエビ科の節足動物。トガリユメエビとも呼ばれます。体長が15ミリ程度のプランクトン生活をするエビで、普通のエビとは形態が異なっているのが特徴です。

ルシファー(悪魔)という学名のとおり、頭がとても細長く不思議な姿をしているエビです。恐ろしい学名をもちますが、なんだか愛嬌があり憎めませんね。透明なので写真にうまくうつらないことが難点です。

シャコのアリマ幼生

シャコ(学名:Oratosquilla oratoria)の幼生は少しずつ変態しながら成体へ成長します。

シャコ成体(提供:PhotoAC)

シャコの幼生はアリマ幼生と呼ばれ、腕の形状はほぼ変わらないのに、胸から腹の形状がどんどん変わるという特徴があります。シャコパンチを繰り出す大きな腕は、幼生のときから健在なのです。

シャコのアリマ幼生(撮影:額田善之)

今回は分類中に別種だと思っていたら、実はシャコだったというケースが多かったです。シャコパンチを繰り出すカマキリのような腕と黒くて大きな目玉でシャコと判別できます。シャコの幼生はかなり多く確認することができました。

胴体が長い不思議なシャコのアリマ幼生(撮影:額田善之)

シャコは美味しいですが、あまり獲れなくなっているので資源回復が望まれます。

1

2
  • この記事の執筆者
  • 執筆者の新着記事
額田善之

額田善之

人生を楽しもう!

愛媛大学理学部生物学科卒の生粋の生き物大好きライターです。特に魚が好きで、子どもと水族館巡りや釣りを楽しんでいます。オートバイで旅をして産地の珍しい魚を食べるのも趣味です。旅行や納豆の記事をよく書きますが、今回から水生生物についても執筆していきますので、よろしくお願いいたします。

  1. なにやら様子がおかしい水族館と話題の桂浜水族館でめくるめくエサやり体験!【高知県高知市】

  2. 足摺海洋館SATOUMIの<バックヤードツアー>に参加してみた 水族館の裏側とは?【高知県土佐清水市】

  3. <足摺海洋館SATOUMI>に行ってみた! 高知県西部・竜串エリアの海を再現する水族館

関連記事

PAGE TOP