アイナメは「観るほどに語る魚」
アイナメは、釣り人にとって人気のターゲットであると同時に、ダイバーや海の生き物好きにとっても魅力あふれる観察対象です。特に岩礁帯や海藻が生い茂るエリアでは、その独特な生態を間近で見ることができます。
岩陰や藻の中をじっと探してみると、透明感のある卵の塊が隠れていることがあります。それは繁殖期の証であり、近くには卵を守るために常に警戒しているオスの姿があるはずです。
オスは外敵を追い払い、時には自分の体より大きな相手にも立ち向かいます。卵の表面をヒレであおいで新鮮な海水を送る姿や、縄張りを守るために全身を使って威嚇する様子は、観察するほどに生命力と気迫を感じさせます。
こうした営みを目の当たりにすると、アイナメという魚が単なる漁獲対象ではなく、海の中で確かに命をつなぐ存在であることを実感します。いつか、彼らの子どもたちが一斉に卵から孵化し、海中へと泳ぎ出す瞬間に立ち会えることを夢見て、観察の時間を終えるのです。
(サカナトライター:ほりぐちよしき)
1
2