水辺にすむ生き物たちにとって、サカナは大切な食料にもなります。中には、サカナを捕まえるのに特化した体のつくりをする生きものがいるのです。
今回の記事ではミサゴという鳥をご紹介します。
猛禽類界の漁師
ミサゴはタカ目ミサゴ科、全長60センチほど(メスの方がやや大きい)、翼を広げると150センチほどになります。
英名は“Osprey”(オスプレイ)で、米軍などで使用されているティルトローター輸送機の名前はこの鳥から来ています。ほかに“Fish Hawk”や“Fish Eagle”とも呼ばれ、サカナを狩る猛禽類であることが英名からも読み取れます。
細くて長い翼と短めの尾羽、白っぽい体で、同じく海岸などで見られるトビとは容易に見分けが付きます。海岸や河川、湖など水辺に生息し、主に魚類を食べています。
水中へダイビングして魚を捕らえる
食べる魚は浅瀬に生息する種類を主とし、コイ、フナ、スズキ、トビウオ、カレイ、タイ、ナマズ、ボラ、ブラックバス、時には長いダツ(森岡照明・叶内拓哉・川田隆・山形則男 (1995) 図鑑日本のワシタカ類, 文一総合出版 / 馬場智子 (2005)香川県高松市屋島におけるミサゴの食性 日本鳥学会誌 / 森航大・榊原貴之・野口将之・吉井千晶・東淳樹 (2020) 岩手県沿岸部におけるミサゴの育雛期の食性.Bird Research)など実に様々です。
空中でホバリングをしながら狙いを定め(しないこともあります)急降下、足を伸ばして水中へダイビングし魚を捕らえます。
時には獲物が大きすぎて落としてしまったり、逆に魚に水中へと引きずり込まれそうになったりとなかなか大変です。捕った魚は必ず頭を前にして運びます。
そんな魚専門のミサゴですが、どうしても魚を捕るのが難しい時は、ヘビやカエル、ネズミなど小動物を捕らえる事もあります。時には養殖場から魚を捕ってしまうことも(橘高二郎(1959)ハマチの養殖について)。
ミサゴが他のタカ類と違う点①足の指が動く!
ミサゴは他のタカ類と違い、魚を捕るのに特化した身体のつくりをしています。
狩りの際、左右外側の趾(あしゆび、第4趾)が後ろへ動き、まるでフクロウのように前二本、後ろ二本の組み合わせになります(可変対趾足といいます)。狙った魚をがっちりとつかめる構造です。
さらに、足の底面はブツブツざらざらした突起がたくさんついています。表面にぬめりがある魚類も、このざらざら構造でしっかりつかめます。
ミサゴが他のタカ類と違う点②鼻の穴が閉じる!
ミサゴの鼻の穴には弁があり、ダイビングする際に水が入らないよう、閉じることができます。
細くて長い翼もダイビングするのに特化した構造です。羽毛は油分で覆われていて、水をはじきやすい状態になっています。
このような身体的特徴等から2012年、タカ科から独自のミサゴ科に分類が変更されています。
魚がいそうな水辺でミサゴを探す
ミサゴは世界に広く分布し、日本ではほぼ全国で見られます。寒冷地のものは冬に暖かい所へ移動し、南西諸島では冬鳥です(叶内拓哉(2020)フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版, 文一総合出版)。
周囲に木や崖があり、浅瀬のある海辺や水辺で探していると見つけることができます。
冬は意外と人間の住む近くの河川でも見かけることがあります。近年ではダム湖周辺での生息も確認されています(国土交通省 (2017) これまでの河川水辺の国勢調査結果 総括検討〔河川版(生物調査編)ダイジェスト版〕参照2019-10-30)。水辺で白っぽく翼の細長い大きめの猛禽類を見かけたら、ミサゴかもしれません。
魚との関わりから鳥類を知ることも楽しいですよ。
(サカナトライター:atelier*zephyr)