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採集した<アマガエル>の複数飼育で直面した壁とは? 個体差から気付いた「エサの取り合い問題」

1か月ほど前に、息子が山道で捕まえてきたアマガエルの赤ちゃん。

口に入るサイズの小さなコオロギをエサとして与えていると、最初は体長1センチにも満たない大きさでしたが、あっという間に大きく成長しました。

3匹のアマガエルを飼育する上で、気が付いたことと、飼育する上での工夫を紹介します。

アマガエルだけでなく、魚や爬虫類、哺乳類などを複数飼育していると起こる「エサの取り合い問題」。皆さんはどのように対処していますか?

エサを与えようとすると逃げる

アマガエルの赤ちゃんたちを飼育し始めた頃は、私や息子がエサを取り換えるたびに警戒して苔の中に隠れていました。

アマガエルは野生では身を守るために動きを止め、周囲の色に溶け込んで身を隠す警戒性質が強いのだそうです。

小さなアマガエル(提供:PhotoAC)

新しい環境や人の気配には特に敏感で警戒心が強く、初めはなかなかエサに近づきませんでした。

しかし徐々に環境に慣れてきて、私たちが与えるエサをじっと待つようになりました。

3匹に個体差がでてきた

アマガエルがエサを食べる様子は驚くほど素早いです。動くコオロギを一瞬で捉え、ジャンプして覆いかぶさるようにして一瞬で捕まえます。

アマガエルとコオロギ(提供:PhotoAC)

アマガエルは獲物を捕らえる際に舌を使うことが多く、捕らえた獲物は顎で噛み砕くことなく飲み込みます。捕らえたエサを一気に飲み込むため、お腹がふくらむのも早く、エサを食べたかどうかはすぐに確認することができます。

3匹同時に飼って一カ月後、大きさに個体差が出てきました。生存競争が始まったのでしょう。

カエルたちの喧嘩の場面は、まるで人間のよう。獲物のコオロギを見据えたまま、片手だけを使って相手を軽くパンチして制し、相手がやり返す前にコオロギの方へ近づきます。

争いは激しいものではなく、相手の動きを牽制しながらエサの確保を優先する行動のように思えます。

個体差に対応しようとしてみたものの

ある日のこと。飼育ケースを覗いてみると、小さいアマガエル達の下腹部が透明に見えたのに対し、大きい方は鮮やかな緑色をしていました。

下腹部が細く、色が薄くなるのは空腹のサインではないかと思い、エサのあげ方を工夫してみることに。エサを時間差で与えることにしてみました。

我が家のアマガエル(提供:栗秋美穂)

エサを優先的に食べる大きい個体を別のケースに移し、小さい個体が食べ終わるまで待ちます。そして、小さい個体がエサを食べ終わったら、大きい方をもとの飼育ケースに戻すという方法でエサを与えてみることにしました。

これにより、小さい方の下腹部は以前より黒っぽいものが見えるようになり、エサを摂れていることが伺えるようになりました。

一方の大きい方は、エサを与えようとすると、私や息子を見て逃げ回るようになってしまいました。捕まえられ、ケースを移動させられるのがストレスになっていたのかもしれません。

飼育している生きもののストレスを減らすために

ケース移動は大きなストレスを伴うと考えられたので、大きなアマガエルは別のケースで飼うことにしました。ケース内でも落ち着きを取り戻し、ストレスを軽減できたのではないでしょうか。

生きたコオロギを与えるほかに、エサを与える対象の個体が食べる量を調整するため、乾燥コオロギなど動かないエサを口元までもっていき、すべての個体にきちんとエサが行き渡るようにする方法も有効だと思います。

育てるのは少々大変ですが、とても可愛いアマガエル。数匹飼育する場合はそれぞれの成長をよく見て、個体ごとの相性を考えること、ストレスを与えずにうまくエサを与えることが重要だと思います。

(サカナトライター:栗秋美穂)

参考文献

筒井 学、萩原清司、相馬正人、樋口幸男(2005)、小学館の図鑑NEO 飼育と観察、小学館、P98

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栗秋美穂

栗秋美穂

多様な学びと生き方を発信するライター

ウミガメの保護活動や、鮭の稚魚を育てて放流する活動をしています。読者の皆様にも、このような経験を通じて、少しでも海の生き物が生きやすい国になればと思います。

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