世界中で重要な水産物とされるウナギ属の魚たち。
特に日本含む東アジアでも多くのウナギを消費していますが、IUCNが評価したウナギ属12種のうち10種が絶滅危惧か純絶滅危惧に分類されています。
また、養殖に利用する稚魚は国際的に高値で取引されることから、密漁などの違法行為も発生。特定のウナギ属の減少や規制強化が同属他種へ需要をシフトさせます。
こうした中でウナギ属魚類を持続的に利用していくために、世界規模でウナギの消費量の動向を把握することが欠かせません。そこで中央大学の海部健三教授と白石広美研究員、台湾国立大学の韓玉山教授は、世界中からウナギ製品を収集し、DNA解析を用いた種同定と世界各国のウナギ流通量を推定しました。
この研究成果は『Scientific Reports』に掲載されています(論文タイトル:Global consumption of threatened freshwater eels revealed by integrating DNA barcoding, production data, and trade statistics)。
ウナギは世界で重要な水産資源
ウナギ属魚類は日本国内で漁獲されているニホンウナギを含め、ヨーロッパウナギなど全16種が世界的に重要な水産資源とされています。
ニホンウナギ(提供:PhotoAC)さらに、養殖に用いられるウナギ属の稚魚(シラスウナギ)は世界的に高値で取引されることから、密漁や密輸などの違法行為が後を絶ちません。
IUCNが評価したウナギ属12種のうち10種が絶滅危惧種か純絶滅危惧種に分類されており、その原因として海洋環境の変化や過剰な漁獲が挙げられています。
また、特定のウナギ属の減少や規制の強化は、規制の緩い地域や他のウナギ属魚類へ需要をシフトさせます。
具体的には、ニホンウナギの稚魚の採捕量の減少はヨーロッパウナギの需要を増加させ、ワシントン条約によるヨーロッパウナギの保護は東南アジアや北中米のウナギ属へ移っていきました。
ウナギ属魚類の保全と持続的な利用のためには、世界規模でウナギの消費動向を把握する必要がありますが、今までグローバルな消費実態は把握されていません。
加工品を外見から種同定するのは困難
さらに、消費実態を明らかにするためには流通しているウナギ属を種同定する必要がありますが、加工品で出回ることが多いウナギにおいて、外見から種を判別することは困難です。
ウナギの蒲焼き(提供:PhotoAC)こういった状況の中、中央大学の海部健三教授と白石広美研究員、台湾国立大学の韓玉山教授は世界中からウナギ製品を収集し、DNA解析を用いた種同定と世界各国のウナギ流通量の推定を行いました。
これにより、世界規模でウナギ属のどの種がどの国や地域でどのくらい消費されているのか明らかにしたのです。
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