海の中を覗くと、人間の落とし物や故意に捨てたようなゴミを見かけることがあります。
その光景に心が痛むと同時に、ゴミの中で力強く生きている魚たちを多数見かけました。
そんな、ゴミに住む魚たちを取り上げたのが、大塚幸彦さんの著書『世の中への扉 ゴミにすむ魚たち』(講談社)。同書の紹介を通して、環境問題について考えたいと思います。
空き缶や瓶を活用するハゼとギンポ
ゴミの中に住む黄色くて小さな魚がいます。「ミジンベニハゼ」です。

この魚は大きくても全長3センチほどで、目の色は光の加減によってエメラルドグリーンに見えたり、青色に見える綺麗な小型のハゼ科魚類。元は貝殻を住処にする習性がありますが、貝殻の代わりにゴミである瓶などを住居にして子育てをすることもあるようです。
日本沿岸でよく出会うニジギンポも空き缶などのゴミ中にいることがあります。体長10センチほどで全体的に褐色で帯模様があるユニークな魚です。

口がにっこり笑っているように見えるため、海の中で出会うとほっこりします。
私が出会ったニジギンポはコーヒー缶からひょっこり顔を出しており、あまりにも可愛かったので写真を撮ったらよかった、と後悔したものです。
『世の中への扉 ゴミにすむ魚たち』を読んで
こうして、海の中でゴミのなか力強く生きる魚たちと出会い、色々と調べるうちに『世の中への扉 ゴミにすむ魚たち』という本に巡り合いました。
この書籍には著者・大塚幸彦さんのユーモアある文章と共に、可愛い魚たちの写真がたくさん載っています。
ベニミジンハゼをはじめ、タイヤを家にしているウツボなど、思わずクスッとしてしまうような写真の数々。思わぬ場所で、人間のごみが魚の住居になっているのだなぁと実感します。
一方で、読み進めていくと、漁業の網に引っかかって死を待つのみのカサゴがいたり、釣り針が引っかかったままのウツボがいたりと、胸の痛む写真もあります。
大塚さんの言葉をお借りすると、「人間がくれたゴミはもちろんいいことばかりじゃない、うまく利用しているものもいれば、苦しめられてるものもいる」。
同書は、環境について考えるきっかけを与えてくれます。
数年後、数十年後の海を守る
近年、プラスチックをはじめとするゴミが海洋環境に影響を与えるなど、私たちの身近なものが脅威となってしまってるケースを多く見かけます。
海に遊びにいくついでにゴミを拾って帰ってみるのも、数年後、数十年後の海を守る一つの手段かもしれません。
『世の中への扉 ゴミにすむ魚たち』は可愛い魚たちを眺めることができ、環境についても考えるきっかけになり、再読する時にはまた違った気持ちで読める一冊でした。
これから先も、海が綺麗でありますように。
(サカナトライター:shell)