コガタペンギンが砂浜に!
日没から15分後……私たちはまだペンギンを観察できていませんでした。調べた情報によると、毎日観察できるわけではなさそうです。
「もう遅いし帰ろうか」と駐車場に歩き始めたその時……! 海岸にとても小さいながらも“動く黒いもの”が見えました。本当に小さくて、肉眼だとゴマどころかコショウの粒くらいにしか見えません。
もしかして、と思ってスマートフォンカメラのズーム機能を使うと……コガタペンギン! 諦めずに海岸の方へ目を細めていた甲斐がありました。
コガタペンギン(撮影:うえの かのん)私たちが観察できたのは6羽。砂浜に戻ったかと思えば波へ立ち向かい、戯れるようにまた砂浜に戻ったり、群れのみんなを待つように海の方をぼーっと眺めていたり……。
コガタペンギンを観察する予定はなかったので、スマートフォンしかもっていなかったのが悔やまれます。残念ながらあまり鮮明な写真を撮ることはできませんでした。
しかし、確かにこの目で、コガタペンギンがこの雄大な海に生きていることを確認できました。
コガタペンギン(提供:うえの かのん)もう少し待てば数百匹の群れで巣に戻るコガタペンギンを見れた可能性もありますが、私たちは日帰りでメルボルンに戻る必要があったため、ここで撤退。グレートオーシャンロード沿いの町に宿泊をする予定であれば、もう少し余裕を持って観察できたかもしれません。
なお、帰りはグレートオーシャンロードではなく内陸部を通る無料の高速道路を使い、3時間ほどでメルボルン市内に到着しました。
野生のコガタペンギンを見て感じたこと
オーストラリアの自然の雄大さを象徴するような名所である十二使徒でコガタペンギンを観察するのは、日本に帰ってきた今でも心に残り続ける、素敵な体験でした。
ペンギンは、日本では観察できない南半球の生きもの。どうしても水族館で見られる“可愛いペンギン”の印象が先立ってしまいます。
しかし、途方もなく広く美しい海で暮らす野生のペンギンを見ると、この自然が成り立っている景色について考えざるを得ません。私たちが生きることは、常に自然に影響を与え続けていることを再認識しました。
この旅で出会えたのは、ペンギンだけではありません。十二使徒ではワラビーに出会い、道中では、オウムの仲間であるキバタンやコアラ、牧場の牛や羊といった生きものたちを見ることができました。
道中で見かけたコアラ(提供:うえの かのん)都市のすぐ隣で自然が息づいている──その事実はとても嬉しく、また自分も自然の一員であろうという意識が生まれました。
グレートオーシャンロードの始まりの街・トーキーのビーチや、グレートオーシャンロードから見る海や森もとても美しく、総じて、このロードトリップは忘れられない体験となりました。
グレートオーシャンロードは森の中も走る(提供:うえの かのん)もしオーストラリアに行く機会があれば、自然と共に生きる生きものたちを全身で体験してみてください。
(ライター:うえの かのん)
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