魚を乾燥させた食材「干物」は、古来より定番の保存食であり、現代でも食卓で楽しまれています。
一口に干物といっても、完全に水分を抜いたものから半生のものまで種類が豊富です。
魚の干物は冷凍してもあまり風味を落とさずに保存ができるので、なかなか買い物に行けない時でも重宝する食材。さらに、水分が飛ぶことで旨みが凝縮される一方、脂は乗ったままで美味しいのです。
その伝統的な保存技術について見てみましょう。
干物の歴史と起源をたどる
日本列島の魚文化において「干物(ひもの)」は古代から長く親しまれてきました。
例えば、縄文時代の貝塚から魚を干した痕跡が発見されており、奈良時代には「からもの」として朝廷に献上されていた記録もあります。
アジの干物(提供:PhotoAC)江戸時代には流通技術の発達とともに庶民の食卓に定着し、港町を中心に各地で“名産干物”として地域振興の一翼を担ってきました。
こうした長年の保存・加工の知恵が、いま「旨みを凝縮させた干物」という形で私たちの元に届いています。
水分が飛ぶと何が起こる? 旨み成分の濃縮
干物が美味しくなる理由のひとつが、「脱水」です。魚は生鮮時に水分を多く含み、旨み成分が広く分散しています。
乾燥または塩漬けを経ることで水分が抜け、タンパク質が変性し、イノシン酸などの旨み成分が集まるため味が濃く感じられるようになるのです。
また、塩による味付けと乾燥による糖・アミノ酸の反応が、香ばしさや旨みの深みを加える鍵となっています。
つまり、干物=保存食から、干物=美味食材へと進化した背景には、こうした化学的変化の蓄積があるのです。
干物の種類とおうちでもできる作り方
干物にはさまざまな種類があります。
代表的なものとして、例えばアジの開き、サバの一夜干し、サンマの丸干し、イカのするめ、鮭とばなどが有名ですね。
干物の素材色々(提供:PhotoAC)また、地方によって塩加減や乾燥方法・魚種が異なるため、同じ“干物”という括りでも味や風味に大きな違いがあります。
家庭で作るなら<冷蔵庫で干す>!
中でも、筆者がおすすめしたいのは「冷蔵庫干し」。
釣ってきた魚を開いて塩を振り、ラップをせずに冷蔵庫で約1日放置するだけ。表面が乾燥した半生状態で、焼くと脂が出てきてとてもおいしいです。
以前、外で魚を干した時にカラスに盗られたことから、この方法が思いつきました。冷蔵庫内は乾燥しているので、食材も早く乾燥してくれます。
ベランダなどに干すのが恥ずかしい人、部屋の臭いが気になる人におすすめです。
自宅での干物づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:せんば千波)