海洋ごみに由来する海洋汚染は人類の大きな課題です。特に最近はプラスチックによる汚染が注目されており、魚やクジラ、プランクトンなど様々な生物からプラスチックが発見されています。
そして、ウミガメもプラスチックが発見されている海洋生物の一つ。特に小笠原で採捕されるウミガメは広い範囲を回遊してきているため、様々な形態のプラスチックを摂食していると考えられています。
そこで、立正大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所、九州大学の研究グループは小笠原諸島に回遊するアオウミガメの消化管内容物を解析。この海域におけるプラスチック汚染の実態を明らかにしました。
この研究成果は「PeerJ Life and Environment」に掲載されています(論文タイトル:Multiple approaches to meso- and macroplastics and the food habitat of the green turtle, Chelonia mydas, in the Ogasawara Islands, Japan)。
プラスチックによる海洋汚染
海洋ごみによる海洋汚染は深刻であり、これを解決することは人類の大きな課題となっています。
世界のプラスチック廃棄物の排出量は2020年で5210万トン/年と推定されており、そのうちの43パーセントが水生環境へ輸送される危険性が指摘されています。実際にプラスチックは海洋生物の体内から多く見つかっており、クジラ、魚、プランクトンなど、様々な生物から発見されているのです。
小笠原諸島のアオウミガメは広範囲かつ様々な形態で分布
ウミガメもプラスチック汚染の被害を受けている海洋生物の一つです。
日本近海ではアオウミガメ Chelonia mydas が生息しており、繁殖期に本州の太平洋沿岸から小笠原諸島に回遊することが知られています。このことから、小笠原諸島のアオウミガメは、広範囲かつ様々な形態で分布するプラスチックを摂食・蓄積していると考えられているのです。
母島のアオウミガメ(提供:PhotoAC)そこで、立正大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所、九州大学の研究グループは小笠原母島のアオウミガメについて、消化管内容物解析を行い、プラスチック汚染の実態を明らかにしました。
この研究では、顕微鏡による消化管内容物の観察に加え、DNA解析、炭素・窒素安定同位体分析の3つの手法が用いられています。
大きなプラスチックが多く見つかる
解析の結果では、調査したアオウミガメ10個体のうち7個体からプラスチックを発見。具体的にはペットボトルのキャップ、ラベル、コンタクトレンズの入れ物、マスクなどが見つかっています。
このうちマクロプラスチック(10平方センチメートル~1平方メートル)は56.5パーセント、メソプラスチック(10平方ミリメートル~10平方センチメートル)が41.3パーセントを占めていることが判明。
メソ、マクロプラスチックは6個体から合計92個が出現し、個体ごとの数が0~31個とばらつきがあるものの、平均出現数は9.2個という結果となりました。
ゼラチン質のプランクトンと誤認
消化管内容物のDNA解析では、採捕時のアオウミガメの餌場がシオミドロの仲間、タマハハキモク、ハイオオオギの仲間が優占する3ヶ所と推定されてます。
一方、南下途上で大型の海藻が摂食できない際には、流れ藻やクラゲ、サルパなどゼラチン質のプランクトンを食べていることが示唆されたとのこと。これにより、アオウミガメが大型の海藻や流れ藻に存在するプラスチックを摂食していると推測されました。
クラゲとアオウミガメ(提供:PhotoAC)また、発見されたプラスチックは大きなものほどシート状が多くなるほか、透明・半透明・白色のものが多くなることからプラスチックをゼラチン質のプランクトンと誤認して食べてしまっていると考えられています。
アオウミガメが摂食したプラスチックは「ひらがな」「簡体字」「繁体字」「ハングル」が表記されているものも存在し、本種の回遊域よりも広い範囲に起源を持つと推定。プラスチックの摂食が越境汚染であることが明らかになったのです。
国際的な協力が必要
今回の研究により、小笠原に回遊してくるアオウミガメについて、プラスチック汚染の実態が明らかになりました。これらのプラスチックに含まれる毒化合物は生物の体に悪影響を与える可能性があるとされています。
今後、プラスチック汚染という大きな課題を解決するためには、国際的な協力が必要になることは間違いないでしょう。
(サカナト編集部)