2024年5月22日に公表された論文で、従来フナムシとされていた種が3種に分かれることが判明しました。
海岸で普通に見られるフナムシの中に新種がいたということは驚くべき事実であり、フナムシ属の多様性を示した研究でもあります。
フナムシとは
フナムシは節足動物のうち、等脚目フナムシ科フナムシ属に分類される無脊椎動物です。等脚目には馴染みの深いダンゴムシやワラジムシが属しています。
フナムシ科は日本各地に分布しており、海岸や磯で多く見られる他、小笠原の固有種であるナガレフナムシのように渓流に生息する淡水性のフナムシもいるようです。
フナムシは漁港や消波ブロックなどの人工物でもよく見られ、時に釣り餌として利用されることもあります。フナムシをゴキブリの仲間だと勘違いする人がいますが、前述したようにフナムシは等脚目に分類されるため、ゴキブリの仲間ではありません。
フナムシの中に複数種含まれていた
本州から薩南諸島に広く分布するフナムシですが、大阪市立自然史博物館の外来研究員である有山啓之氏と国立環境研究所の日置恭史郎氏はフナムシとされている種に複数の種がいるのではないかと疑問を持ちました。
2024年5月22日に公表された「A morphological and molecular study of Ligia exotica Roux, 1828 (Crustacea: Isopoda: Ligiidae) from Japan, with descriptions of two new species」では兵庫県西宮市、大阪府岬町、神奈川県江ノ島の個体が調査され、形態的差異や遺伝的差異があることから、従来、フナムシ(Ligia exotica)とされていた種を3種に分類し、兵庫県、大阪府産の個体をアオホシフナムシ(Ligia laticarpa)、神奈川県江ノ島産の個体をフタマタフナムシ(Ligia furcata)と命名。Ligia exotica(旧フナムシ)には新たにトライフナムシの標準和名が与えらえました。
これら3種は形態的によく似るものの大顎や胸肢などから区別できる他、アオホシフナムシは名前の通り雄の背面に青い斑点を持つことが特徴とされています。
(参考:大阪市立自然史博物館-[研究成果] 1種と思われていた「フナムシ」を調べると3種だった!)
このように「従来1種とされていた種の中に複数種含まれていた」ということは分類学ではよくあることであり、様々な分類群でこういった事例が見られます。我々が何気なく見ている生物も、もしかしたら新種だったりするかもしれません。
(サカナト編集部)