生物の体色や体の形は、捕食者から身を守る重要な形質となり得ます。
オタマジャクシにおいては、多少な捕食者に狙われる中で、体の色や形を柔軟に変化されることが知られてきました。実際に、自然下では尾の色が変化したオタマジャクシが観察されているようです。
一方、この色の変化については、どのような理由でどの捕食者に対する応答なのか、謎に包まれていました。そこで、京都大学の研究グループはヒガシニホンアマガエルの幼生と捕食者を一緒に水槽で飼育し、色の変化やその強さを検証しました。
この研究成果は「Ichthyology & Herpetology」に掲載されています(論文タイトル:Predator-Induced Tail Coloration Toward Diverse Dragonfly Nymphs in Tadpoles of the East Japan Tree Frog (Dryophytes leopardus))。
可塑的な防御
生き物の形や体色は捕食者から身を守る重要な形質です。
色や形による防御の効果は、対する捕食者の種類によって異なるとされています。さらに言えば背景環境によって、同じ色でも見え方が変わるのだとか。特に田んぼという環境では、季節や地域による、生息環境の条件が多様だといいます。
また、こうした不安定な環境では、状況に応じて防御方法を柔軟に変化させることができる「可塑的な防御」が進化しやすいと考えられています。
モデル生物の「オタマジャクシ」
この「可塑的な防御」については、オタマジャクシがモデル生物として長年注目されてきました。
オタマジャクシ(提供:PhotoAC)というのも、オタマジャクシは捕食者から放出される化学物質をヒントに、周囲の捕食リスクとその大きさを評価できると考えられているからです。オタマジャクシはこのリスクに対して、尾びれを高くするなどの形態変化を示すことが知られています。
このような変化は捕食を回避できるというメリットを持つ一方で、エネルギーコストが生じるといでメリットもあるようです。
尾の色が変化するアマガエル属の幼生
アマガエル属の一部の種は、ヤゴ(トンボの幼生)によって尾全体が橙色に変化することが知られています。
これは色を変化させることで、捕食者の攻撃を尾に誘う「ルアー効果」があるという仮説が提唱されています。
しかし、これまでの研究はヤゴなど特定の捕食者に焦点を当てたものがほとんどで、ヤゴの種類によって反応の違いがるのか、またはヤゴ以外の捕食者にたいする応答などは検証されていませんでした。
アマガエル類(提供:PhotoAC)日本に生息しているアマガエル類の幼生でも、野外において尾の色が鮮やかな個体が観察されていますが、こ体色変化が捕食者に対する応答か否か明らかに謎に包まれてたといいます。
そうした中で、京都大学の研究グループはヒガシニホンアマガエルを対象に、尾の色の変化が捕食者により引き起こされるのか、捕食者によって変化の有無や強さは変わるかを飼育実験を用いて検証を行いました。
異なる捕食者と共に飼育
研究では、ヒガシニホンアマガエルの幼生を複数の水槽で飼育する実験が行われています。
水槽にはそれぞれ異なる捕食者が入れられ、体色と形態の変化について観察が行われました。
用いられた捕食者は生息場所や狩りの方法が異なるヤゴ4種(クロスジギンヤンマ、カトリヤンマ、ウスバキトンボ、シオカラトンボ)、コオイムシやタイコウチなどの水生昆虫と、イモリです。
タイコウチ(提供:PhotoAC)なお、この実験では捕食者とオタマジャクシは直接接触しないよう、穴の開いたプラスチックケースで隔離されています。
捕食者の種類によって異なる応答
飼育実験の結果、ヤゴと一緒に飼育した個体は、2週間後に尾が鮮やかな橙色に変化し、尾びれが高くなることが確認されました。これは東アジアのアマガエル類における尾の鮮やかな色彩が、捕食者によって引き起こされることを実験的に証明した初の事例です。
中でも、水草の上で待ち伏せをするクロスジギンヤンマのヤゴと飼育した場合に、尾の色と形の変化が速やかに、また最も強く現れたといいます。また、コオイムシ、タイコウチ、イモリに対しては、尾に色や形の変化が見られていません。
これらの結果は、ヤゴの種類によって変化の大きさや速度が異なること、コオイムシやイモリなどの獲物を掴んだり、丸呑みしたりする捕食者に対してはルアー効果が期待できないことから、エネルギー削減のため、色や形を敢えて変化させなかった可能性を示すものとなりました。
未解明な点も多い
今回の研究により、ヒガシニホンアマガエルの幼生が捕食者の種類によって、体色や形態の変化を調整している可能性が示されました。
一方、尾の鮮やかな色が捕食を回避することに有利に働くのかは、未だ謎が多いようです。
また、今回のような反応が他のカエルにおいても見られるのか、地域や環境の条件によってどのくらい変化するのかも今後の課題とされています。
(サカナト編集部)