2013年、海底にミステリーサークルを作る魚としてアマミホシゾラフグが発表され、大きな話題となりました。
千葉県立中央博物館の川瀬裕司氏らはこのアマミホシゾラフグを研究していく中、ハゼ科の1種が小さなミステリーサークルを作ることが発見します。後にサキンハゼと命名される本種を対象に、研究チームは2018年より本格的な潜水調査を開始しました。
この研究成果は「Fishes 」に掲載されています(論文タイトル:Nesting and reproductive behavior of the sand-dwelling goby Hazeus ammophilus (Gobiidae) with radial ditches around its nest )。
海底のミステリーサークルの正体
海には多種多様な魚が暮らしており、その生態も様々です。
円形幾何学模様を作る魚として、2013年に発表されたアマミホシゾラフグは大きな話題となりました。
実はこの構造物、初めて発見されたのは1995年頃。しかし、2011年にそれを作っているのがフグと分かるまでは、詳細が謎に包まれていました。
海底のミステリーサークル(提供:PhotoAC)そのことからダイバーの間では“ミステリーサークル”と呼ばれていたようです。
今では、このミステリーサークルは、アマミホシゾラフグのオスが繁殖期に作り出す産卵床であることも明らかになっています。
ハゼが作る小さな構造物
アマミホシゾラフグの話題が記憶に新しい中、千葉県立中央博物館の川瀬裕司氏らは海底に小さなミステリーサークルを発見します。
アマミホシゾラフグの研究を進めていく中で、発見されたこのミステリーサークルはフグとは全くことなる分類群のハゼ科の1種が作っていたのです。
後に、このハゼは2021年に新種記載され、2022年に日本初記録種として新称「サキンハゼ」(Hazeus ammophilus)が提唱されています。
そして、研究チームは2018年、サキンハゼのミステリーサークルについて本格的な潜水調査を開始しました。
サキンハゼは楕円形の模様を形成する
研究では、沖縄県国頭郡金城町沿岸の水深約8メートルの砂泥底で潜水調査が行われました。
沖縄県国頭郡金城町の海(提供:PhotoAC)この調査では、サキンハゼのオスが二枚貝の殻や枯葉などを産卵巣として利用していること、その周囲には2~30本の溝が放射状に形成されていることが発見されています。溝を含めた大きさは、長いところで115ミリ、短いところで68ミリ(平均値)です。
形成された溝の外縁は歪な楕円形であり、アマミホシゾラフグが作る円形のミステリーサークルとは異なっています。
サキンハゼのオスはメスをこの巣に誘いペアで産卵。メスが去った後は、オスが卵に水を送ったり、砂をかけ捕食者から卵を隠したりして、孵化するまで保護をすることが調査で明らかになりました。
水槽実験で形成過程が明らかに
サキンハゼのミステリーサークルについて、より詳しく調べるために水槽実験も行われました。この実験では、サキンハゼがどのようにミステリーサークルを作るのかが明らかになっています。
まず、オスが巣から外側に進みながら溝を掘るといった行動をし、それを様々な位置から繰り返します。これにより巣は砂でほとんど埋まってしまいますが、オスは巣に溜まった砂をヒレで吹き飛ばし、巣を空にするのです。
これらの行動を繰り返すことにより、巣の周囲に放射状の溝が形成され、巣の周りがクレーター状になっていたのです。
自然界でこの構造は必ずしも発達しないものの、構造自体がメスによる配偶者選択に関係している可能性があるとされています。
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