絶滅危惧種と聞いて、「いなくなってしまう」という漠然とした危機感は持ちつつも、「なぜいなくなってはいけないのか」をきちんと考えたことはありますか?
絶滅危惧種であるケープペンギンや過去に絶滅した生き物たちのことを知ると、私たち人間が種の絶滅を防ごうとする理由も見つめ直すことができます。
「絶滅」という現象を、より具体的に、より身近に考えてみませんか。
ケープペンギンが減っている理由
ケープペンギンは、日本の水族館や動物園でも見かけることがある、親しみ深い生きものです。
水族館に行けば会える一方、野生下での個体数は過去100年間で約90%も減少しています。
ケープペンギン(提供:PhotoAC)主な原因として挙げられているのは、アンチョビやイワシなど、ケープペンギンの主食である小魚を人間が乱獲したこと。また、気候変動による海水の温度や海流の変化、油の流出などによる汚染も大きなダメージを与えているといいます。
IUCNレッドリストにケープペンギンが掲載されたのは2010年。当時は絶滅危惧種(EN)だったものの、2024年にはカテゴリーが引き上げられ、野生絶滅(EX)の一歩手前、近絶滅種(CR)に分類されています。
近い未来、野生のケープペンギンは地球上から姿を消す可能性があるのです。
絶滅するとどうなる? <ステラーカイギュウ>が消えた海
「飼育個体が確保できていれば問題ないのでは」という考えが頭をよぎる人もいるかもしれません。ですが、過去を振り返ってみると、そうとは言いきれない事例があります。
北太平洋のベーリング海には、かつてステラーカイギュウという大型の海牛が暮らしていました。ジュゴンやマナティーの仲間で、昆布などの海藻が主食でした。
また同じ頃、ベーリング海では、人間によるラッコ狩りも頻繁に行われており、ラッコの生息数も減少していました。
そのため、ラッコの捕食対象であるウニが増加。増えたウニたちは、ステラーカイギュウの主食である海藻を根っこから食べ尽くしてしまったのです。
ウニと昆布(提供:PhotoAC)ステラーカイギュウは、ラッコの減少による海の生態系変化、また人間による狩猟で急速に数が減少し、1768年には絶滅したとされています。
さらには、海藻が失われてしまった海底は、砂地ばかりの砂漠のような状態になってしまいました。
そのため、海藻を棲家や餌場としていた魚や貝も減少し、沿岸の漁業に大きな打撃が出たそうです。
ドードーが消えた森で起きたこと
もう一種、既に絶滅してしまったドードーの例を紹介します。
マダガスカルの東に位置するモーリシャス島で暮らしていたドードーは、森の中で果実を食べ、飲み込んだ種子を別の場所で排出し、植物の種を運ぶという役割を担っていました。
モーリシャス島(提供:PhotoAC)しかし、17世紀に人間が持ち込んだ動物や、狩猟の影響が重なって絶滅してしまいます。
その後、カルバリアという木が激減しました。カルバリアの種は硬い殻に守られており、ドードーの頑丈なくちばしで傷つけられてこそ、発芽が促されていたのです。
ドードーに依存していた植物の広がりや再生が滞ってしまったことにより、森の構造が崩れ、土壌が流出しやすくなったことが記録されています。
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