現在、東京・上野の国立科学博物館で開催中の特別展「大絶滅展ー生命史のビッグファイブ」。
“絶滅”といえば、隕石衝突による恐竜の絶滅が有名ですが、地球では過去に5回も大絶滅が起きているといいます。
しかし、生き物は再び繁栄を取り戻しています。展示からは、絶滅が起きたからこそ新しい進化が促され、現在の生態系にたどり着いたという事実も伺えました。
絶滅は地球のサイクルであり、悪いこととは一概に言えないのではないか──そう考えるのは自然なこと。
過去の大絶滅と、いま起きている絶滅の違いを比べ、いま絶滅危惧種を守る意味を考えてみます。
【画像】水族館で大人気の生きものも絶滅寸前?なぜ種の絶滅を防ぐべきなのか
過去の大絶滅と、いま起きている絶滅の違い
過去の大絶滅は、隕石衝突や大規模な火山活動など、突発的な自然現象によって引き起こされました。
たとえば大絶滅の中で最も認知が高い恐竜の絶滅では、恐竜の化石が見られなくなる地層から隕石由来の成分であるイリジウムが発見されており、巨大隕石の衝突が原因と考えられています。
その後、数百万年という長い時間をかけて、空いたポジションで生き残った生物が多様性を増していきます。長い時間がかかるものの多様性が増す過程で邪魔は入らず、この回復の過程は非常にゆっくり進み、人間のように環境を急激に変える存在はいませんでした。
一方、現在進行している絶滅は、人間活動によって桁違いのスピードで進行しているといいます。
環境が変化するスピードが速すぎるため、空いた生態的な役割が埋まる前に次の変化が起こり、生態系が立て直す余裕を失っているのです。
<カワウソ>の例
コツメカワウソは、サンシャイン水族館や新江ノ島水族館をはじめとした多くの水族館・動物園で見られる馴染み深い生き物です。
しかし、国際自然保護連合(IUCN)が定めるレッドリストでは野生で高い絶滅のリスクに直面している「危急種(VU)」に指定されている絶滅危惧種です。過去30年で個体数が約3割減少したと推定されています。
減少の原因は、都市開発やゴミなどの汚染による生息地の破壊や、ペット需要による密猟や密輸です。
コツメカワウソ(提供:PhotoAC)ニホンカワウソが絶えた川
コツメカワウソと同じカワウソ属に属するニホンカワウソという種がいます。
かつて日本の川や海岸沿いにはニホンカワウソが生息していましたが、2012年に絶滅が宣言されています。
ニホンカワウソが絶滅したあと、彼らが生息していた川にはある変化がありました。
まず、カワウソの主食であったカニが増え、水草が食べ尽くされました。水草がなくなった影響で川が濁りやすくなり、水質が悪化。
そして、川の生態系も変化します。
捕食対象であった小魚が増え、餌である虫や藻を奪い合います。そのため、競争に負けた弱い魚はやせ細り、その魚を食べる大きな魚もやせ細ったり、生息数を減らしてしまったのです。
このように、1種が絶滅してしまったことがきっかけで漁業に大きなダメージを与えたと考えられているのです。
いま絶滅を放っておくとどうなる?
生き物が絶滅し続けても、地球は自然とバランスを取り戻すかもしれません。さらには、次の時代への新しい進化が始まる可能性もあります。
しかし、それには途方もない年数がかかります。
変化を待つあいだ、さらに生き物がいなくなったり、生態系が変化したりすれば、人間の間でも食料不足が問題になるかもしれません。それに気候変動なども加わり、人類文明そのものが脅かされる未来も考えられます。
新しい進化とバランスを取り戻した新時代は、私が生きている間はおろか、孫の代にすら訪れないのです。
いま私たちが絶滅危惧種を守る意味
環境保護 イメージ(提供:PhotoAC)人間の寿命は短く、文明社会に生まれた以上、できるだけ快適に生きたいと願う存在です。その生活の中で、人間は多くの自然を壊してきました。
だからこそ、壊したものを人間自身の手で守り、立て直そうとする姿勢には意味があります。それは過去への反省であると同時に、限られた一生を安心して生きるための選択でもあります。
せめて孫の世代まで、そしてその先の世代も、当たり前に暮らしていける世界であってほしい。今を生きる私たちにできるのは、その土台を少しでも崩さずに手渡すことだけです。それでも、その積み重ねが未来を細く長く支えていきます。
もちろん、地球そのものがいつか終わる可能性は否定できません。それでも、私たちは「今」を生きています。
終わりがいつ訪れるかわからないからこそ、この瞬間にできることを選び、未来へ少しでも良い状態を手渡そうとする行為には、確かな意味があるのではないでしょうか。
(サカナトライター:Miyuki)
参考文献
特別展「大絶滅展-生命史のビッグファイブ」ー東京都国立科学博物館
UN Report: Nature’s Dangerous Decline ‘Unprecedented’; Species Extinction Rates ‘Accelerating’