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オニコンブ・リシリコンブ・ホソメコンブ──分類学的には全て<マコンブ>? 遺伝的に区別できないことが判明

マコンブは日本食に欠かせない藻類の1つです。

北日本はマコンブの有名な産地であり、変種としてオニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブが知られています。

【画像】昆布の王様とも呼ばれるオニコンブ

しかし、これらの変種に対応する遺伝集団の存在は示唆されていたものの、それを支持する研究は1報のみだったようです。

そうした中で、北海道大学の地崎賢汰氏らから成る研究グループは、各地からマコンブ、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブを収集し、集団遺伝学的な再検討を行いました。

この研究成果は、藻類学の専門誌「Journal of Phycology」に掲載されています(論文タイトル:Lack of genetic support for varieties in Saccharina japonica (Laminariales, Phaeophyceae): Proposal for taxonomic merger)。

重要な水産資源「マコンブ」

マコンブ Saccharina japonica は朝鮮半島、極東ロシア、日本に分布する藻類です。非常に重要な水産資源として知られており、日本食にも欠かせません。

リシリコンブ(提供:PhotoAC)

また、マコンブという種にはオニコンブ S. japonica var. diabolica、リシリコンブ S. japonica var. ochotensis、ホソメコンブ S. japonica var. religiosa といった変種が含まれています。

変種とは種として区別できないが、ある程度わけることのできる種の下位分類的なランクです。

マコンブの分類学的な歴史

マコンブは1700年代後半にスウェーデンの生物学者 Carl Peter Thunberg が持ち帰った標本に基づき、Johan Erhard Areschoug によって1851年に記載されました。

時は流れ1902年、札幌農学校の教授であり植物学者の宮部金吾氏は、マコンブと似ているものの、組織構造や形態が異なることを根拠に、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブを記載します。

しかし、これに対し、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブがマコンブと交雑可能であること、形態的特徴が不明瞭であることから、同種として扱うべきという主張が2000年代まで数々と報告されていたようです。

種ではなく変種として扱われる

2008年になると、マコンブ、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブは特定の遺伝子領域でも区別できないが、それぞれの分布域が異なることに加えて、葉状部の基部が僅かにことなることかた、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブをマコンブの変種として扱うと発表されます。

オニコンブ(提供:PhotoAC)

しかし、マコンブと3変種について、集団遺伝的な研究が多数行われてきたものの、これらに相当する遺伝集団の存在を示唆する研究は1報のみでした。さらに、北海道では地域ごとにマコンブと3変種に分けられていた一方、東北などの個体群については検討されていなかったといいます。

そうした中で、北海道大学の地崎賢汰氏らから成る研究グループは各地からマコンブと3変種を収集し、集団遺伝学的な再検討を行いました。

5つの集団を想定しDNA解析

研究では2022~2023年にかけて、6つの道県46地点から475個体のマコンブと3変種が採集されました。

これらの個体を、既往研究のマコンブと3変種の分布域に基づき種同定。宮城県、福島県、茨城県に分布する個体群に関しては、形態的な特徴からホソメコンブ様のマコンブとして区別されています。

これにより、マコンブと3変種にホソメコンブ様のマコンブを加えてた、5つの集団の存在を想定し研究が行われました。

分類学的にはすべてマコンブ

サンプルからDNAを抽出し解析した結果では、想定された5集団はおろか、存在が示唆されてきたマコンブと3変種に相当する遺伝集団も検出されなかったといいます。

この結果から、マコンブ、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブは形態だけでなく、遺伝的にも区別することができないことから、分類学的にはすべてマコンブとして扱うことが妥当であると結論付けされたのです。

オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブは生息環境を反映したマコンブの表現型と考えられています。一方、研究では細かい区分での特異的な遺伝集団が検出されており、各地域でのブランド昆布の創出が可能とのことです。

掛け合わせやブランド昆布創出にも期待

今回の研究により、マコンブ、オニコンブ、リシリコンブ、ホソメコンブが形態的・遺伝的にも区別ができないことが明らかになりました。また、より狭い地域に特異的な遺伝集団が検出されており、各地でブランド昆布の創出も可能とのことです。

加えて、いずれの昆布も同種と判明したため、異なる産地のマコンブの交配が可能となり、良質な養殖株の作出も期待されています。

(サカナト編集部)

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