近年、海水温上昇や人間活動により魚類の分布が変化しています。
この現状を把握し、将来どのような変化があるのか予測するためには、分布に影響を及ぼしている要因を解明することが必要不可欠です。
そこで、東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所の長田穣准教授らから成る研究グループは、日本全国で大規模な環境DNA調査を実施し、多数の沿岸魚種を検出することに成功し分布の解析を行いました。
この研究の成果は「Scientific Reports」に掲載されています(論文タイトル:Large-scale environmental DNA survey reveals niche axes of a regional coastal fish community)。
環境DNA調査で分布に影響を与えている要因を探る
気候変動や人間活動により、魚の分布が変化していることが近年、報告されています。
近年北限が更新されたロクセンスズメダイ(提供:PhotoAC)魚の分布について現状を把握し、その未来を予測するためには、分布に影響を与えている要因を突き止めることが重要です。
そうした中で、東北大学・海洋研究開発機構変動 海洋エコシステム高等研究所の長田穣准教授らから成る研究グループは、日本全国528地点において環境DNA調査を実施しました。
本調査で用いられた「環境DNA」とは、採水した水からそこに生息している生物を推定することが可能であり、少ない労力で多くのデータが得られること、採集を伴わないことから近年、よく使われる手法です。
1200以上の魚種を検出
環境DNA調査の結果では、1220種もの沿岸魚種を検出することに成功しています。
さらに、研究グループは得られた膨大なデータをもとに、魚の分布に影響を及ぼしている要因を分析。最先端のデータ解析手法を用いて、隠された2つの変数を発見し調べたところ、5つの地理的境界線が見出されました。
5つの地理的境界線
地理的境界線とは、生物相が大きく変化する境界線のことです。
日本の沿岸魚種についても、境界線を挟んで魚類相が異なります。
今回、屋久島近海に引かれた境界線は、以前の研究で「大隅線」として報告されていたものです。ここでは、太くて流れの速い黒潮を横断することができなことから、近縁種が分かれて分布していることが知られています。
屋久島の海(提供:PhotoAC)また、他の境界線についても、黒潮や親潮によって輸送されてきた魚類によって生物相の変化が生じているとのこと。
これのことから、日本近海を流れる海流は魚類を輸送したり移動を妨げたりすることで、沿岸部の魚類相を形成していると推察されています。
生物分布の予測に貢献
今回の研究では、環境DNAを駆使することで、1200以上もの沿岸魚種の検出に成功しました。
また、海流の様々な働きが日本の沿岸魚種の分布に大きな影響を与えていることも明らかになっています。
大規模な環境DNA調査と先端的なデータ解析手法を用いることで、生物多様性の理解を深めるだけでなく、今後の生物分布の予測にも貢献すると考えられています。
(サカナト編集部)