日本産のヒゲダイ属
ヒゲダイ属魚類は下顎に柔毛状のひげが多数見られ(種によっては痕跡的)、背鰭起部前方に前向棘があるなどの特徴を持ちます。
8種ほどがインド-西太平洋に分布し、先述したように日本にはそのうちの4種が生息しています。
「たもり」とも呼ばれる<セトダイ>
セトダイ Hapalogenys analis Richardson, 1845は瀬戸内海や東シナ海に多く見られます。
四国や九州の一部地域では「たもり」とも呼ばれています。その由来は平家の武将で、壇ノ浦の戦いにおいて敗れた武将、平知盛(たいらのとももり)の「とももり」の部分が転じて、「たもり」と呼ばれるようになったという説が有名です。
愛媛県産のセトダイ(提供:椎名まさと)一方、コショウダイのことも「たもり」と呼ぶらしく、榮川(1982)によれば、「広く遊泳せず、小範囲を行き来していることから、田を見回る農夫に例えて『田守り』の意でよぶ」との記述もみられます。
セトダイの体側には特徴的な太い横帯が数本見られますが、死後は薄くなる傾向にあるようで、写真の個体でも痕跡がある程度です。しかし、尾鰭の黄色が目立ち、その縁辺が黒くなるという、独特の色彩をしているので見分けは難しくはないでしょう。
ヒゲダイよりも小型で全長30センチほどですが、それよりももっと小さい個体が多いように思います。小さくても塩焼きなどにすると美味しい魚です。
細い縦帯が特徴的な<シマセトダイ>
シマセトダイ Hapalogenys kishinouyei Smith and Pope, 1906 もまた、高知県などで「とももり」という別名で呼ばれています。
シマセトダイ(提供:椎名まさと)本種はセトダイによく似ていますが、セトダイと逆に細い縦帯が数本入ることが特徴。生息水深はセトダイと比べると深く、水深100メートルを超える深さから底曳網漁業によって漁獲されるものの、あまり多くは獲れないようです。
また、サイズは全長30センチをこえるくらいになるといいますが、より小型の個体が多いように思われます。やはり小さいですが美味しい魚です。
ヒゲダイを食べる
我が家に届いたヒゲダイをいよいよ食べてみます。
今回のヒゲダイはかなり大きいもので、いざ捌こうとしてもなかなか包丁が入らないのに驚きました。それでもなんとか捌くことができましたが、へとへとです。
そんな手ごわいヒゲダイも姿造りでお刺身に。薄く切ってポン酢で美味しくいただきます。
ヒゲダイの刺身(提供:椎名まさと)身はとても美しい白色をしており、脂ののりもあり、美味なものでした。
脂のりが程よく鍋物も◎
しかし、筆者が一番美味しいと感じたのが鍋物です。
タラなどほかの魚と一緒に身を鍋にいれたり、あるいはしゃぶしゃぶにしたり。やはり脂ののりもほどよく、最強寒波の到来により冷えた身体を温めてくれたのでした。
ヒゲダイのしゃぶしゃぶ(提供:椎名まさと)今回ヒゲダイを食べたことにより、日本産のヒゲダイ属をすべて食べることができましたが、このヒゲダイが一番美味しかったように思います。