2022年10月、高知県の西の端、大月町というところで釣りをしていた筆者。
夕方にキビナゴをつけてぶっこみ釣りをしていると、強い引きがありました。上がってきたのは、ホウセキキントキという魚。
しかし、その姿はよく見るホウセキキントキとは大きく異なっているものでした。一般にお店で売られているホウセキキントキは全身が真っ赤なのですが、その個体は全身が銀色に光り輝いていたのです。
実はこの魚、カメレオンのように色を変化させることができるといいます。
ホウセキキントキとは
ホウセキキントキ Priacanthus hamrur (Fabricius, 1775) は、硬骨魚綱・キントキダイ科・キントキダイ属の魚です。
キントキダイ属魚類は水深数10メートル~100メートルほどのやや深い場所に生息しているものが多いのですが、そのなかでもこのホウセキキントキは浅いサンゴ礁域でも普通に見ることができます。
ホウセキキントキの群れ(提供:PhotoAC)分布はインド-太平洋域の広域に及び、生息地では普通種です。
日本国内における分布域は富山湾、京都府以南の日本海および相模湾以南の太平洋岸であり、琉球列島や小笠原諸島などでは数多く見られることから暖海域の魚といえますが、2023年11月には宮城県の金華山沿岸でも漁獲されています。
ホウセキキントキとの出会い
私がホウセキキントキに初めて触れたのが2009年のこと。高知県宿毛市在住の釣り人からいただいた全長10センチを少し超えるくらいの小さな幼魚でした。
その後、2012年に京都府の魚市場でホウセキキントキを購入したときに初めてホウセキキントキを食べたのですが、大変美味しい魚であったことを覚えています。
ホウセキキントキ(提供:椎名まさと)それ以降も何度かホウセキキントキを購入して食べていますが、私が購入したホウセキキントキはいずれも写真のような全身が真っ赤な個体でした。
釣れたホウセキキントキの異彩な姿
2022年の秋、筆者は高知県南西部にある大月町、水深5メートルほどと比較的浅いごろた石のある場所で釣りをしていたとき、はじめてホウセキキントキを釣ることができました。
ちょうど17時をすぎて太陽が沈みつつあり、夜行性の肉食魚たちが隠れ家を出て動き出そうとしている時間帯。狙いはイットウダイ科やテンジクダイ科、ハタンポ科、ハタ科、フエフキダイ科の魚などの魚たちです。
高知県大月町の港。魚影が濃く釣り人も多い(提供:椎名まさと)そんな中、あたりがあり、全身が銀色に光輝く魚が上がってきました。最初はこのあたりの海に多く見られる、ハタンポの仲間か、あるいは小ぶりなフエダイの仲間かと思いましたが、陸にあげてみると、ホウセキキントキだったのです。
しかし、これまで出会ったホウセキキントキと異なり、銀色の美しい色彩のため、別のキントキダイ科の魚かと思ってしまいました。
ホウセキキントキの七変化
釣れたホウセキキントキをクーラーボックスに移そうと用意していると、そこにいたホウセキキントキは銀色ではなく、ピンク色になりました。
色が変わった!(提供:椎名まさと)そして、体側には数本の横帯が出現。
ピンク色の体に横帯が現れた(提供:椎名まさと)やがてその色はピンク色から濃い赤色に変わり、体側に入っていた横帯も消えてしまい、もうそこから二度と銀色やピンク色に変わることはありませんでした。
ピンク色から赤くなりつつある。写真ではわずかに横帯が確認できる(提供:椎名まさと)完全に絶命すると、体色は全体的にメタリックな赤色に変化し、魚市場や魚屋さんで見るような色彩になります。まるでカメレオンのようで驚かされました。
絶命した個体(提供:椎名まさと)ただし、水中写真でみる限り、ゆっくり泳いでいる個体であっても全身が真っ赤な個体もよく見られるので、真っ赤な色=絶命した時の色、というわけでもないようです。
ホウセキキントキが色を変化させる理由はわからないのですが、海中ではすぐに色彩を変化させることで古くからダイバーには知られていた魚といえるでしょう
ほかに同じキントキダイ科のゴマヒレキントキや、ミナミキントキでも色彩の変化が見られます。
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