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1000個体以上の<アカシュモクザメ>を解析! 有明海奥部が“重要な保育場”だとが明らかに

アカシュモクザメは世界中の温帯~熱帯に広く分布するサメです。

本種は成熟が遅く繁殖力が低いことから漁業の影響を受けやすく、世界的に個体数が減少。IUCNレッドリストで「CR(深刻な絶滅危惧)」に分類されています。

これまで、アカシュモクザメの保育場としてアメリカ大陸やオーストラリアが報告されていますが、日本を含む北西太平洋では科学的に確認された保育場はありませんでした。そうした中で、長崎大学の研究チームは南西日本4海域で混獲されたアカシュモクザメを解析。アカシュモクザメの保育場を特定しました。

この研究成果は「Global Ecology and Conservation」に掲載されています(論文タイトル:Ecological function of the Ariake Bay as a scalloped hammerhead shark (Sphyrna lewini) nursery in the northwestern Pacific)。

個体数減少しているアカシュモクザメ

アカシュモクザメ Sphyrna lewini はシュモクザメ科に分類されるサメ類です。

本種は温帯~熱帯に広く分布するものの、成熟が遅く繁殖力も低いことから漁業に影響を受けやすく、個体数が世界的に減少しているといいます。

アカシュモクザメ(提供:PhotoAC)

サメ類の保全においては、幼魚から成魚へ加入する割合に大きく寄与する沿岸の「保育場」の特定が重要です。しかし、沿岸部は人為的な影響により劣化が進行しており、保育場が喪失しています。

また、アカシュモクザメの保育場はこれまで、オーストラリアやアメリカ大陸などで報告されてきましたが、日本を含む北西太平洋では科学的に確認された保育場はありませんでした。

4海域で混獲された1000個体以上を解析

今回、研究チームは2006~2024年に南西日本4海域(有明海、九州西部沿岸、玄界灘、足摺岬周辺)で混獲されたアカシュモクザメを1167個体を解析。

保育場と判定できる3つの基準である「新生仔の出現頻度が高い」「新生仔が長期滞在する」「複数年にわたり繰り返し利用される」について、検証をおこなっています。

さらに、「海域、サイズ、月別の出現状況」「臍帯痕(へその緒痕)の治癒状況に基づく出生直後の個体識別」「脊椎骨椎体に基づいた年齢推定」「0歳個体の栄養状態」「捕獲時の水温と塩分」「エイ類駆除事業における混獲量推定」といったデータを統合することで、有明海奥部の保育場としての機能を評価しました。

有明海はアカシュモクザメの重要な保育場

検証の結果、臍帯痕が開いた出生直後の新生仔は有明海と橘湾のみで確認。そして、最も多く出現したのは有明海だったようです。

有明海では19年間にわたり毎年0歳の個体が確認され、継続的に利用していることも判明。生後3~6ヵ月で湾外へ移動する個体もいれば、最長2歳まで留まる個体も確認されています。

有明海(提供:PhotoAC)

これらのことから、有明海奥部の浅海域は科学的根拠に基づいた「重要な保育場」であることが結論付けられました。

また、成長段階による生息場所の違いも見出されており、アカシュモクザメが成長段階に応じて海域を使い分けていることも示唆されています。

幼魚の成長を支える有明海奥部の機能

さらに、有明海奥部の中程度の塩分がアカシュモクザメの成魚を含む大型捕食者の侵入を抑えているほか、0歳個体の栄養状態から有明海の餌環境がハワイの保育場より良好である可能性も示されました。

このことは、有明海奥部がアカシュモクザメ幼魚の成長に良好な保育場であり、出生後にいかに奥部へ移動できるかが、生存率に影響している可能性があるとしています。

また、エイ類駆除事業の調査から年間4837~1万6115尾の幼魚が混獲されており、これはハワイの保育場の(約7000尾/年)を上回る可能性があるとか。商業漁業になる混獲も含めると、実際の漁獲数はもっと多いと考えられています。

有明海の保全が必要不可欠

今回の研究によって、有明海が北西太平洋で初めてアカシュモクザメの保育場として機能している科学的な根拠が提示されました。これは、有明海が世界的に見てもアカシュモクザメの重要な保育場あることを示すものです。

また、アカシュモクザメの保全においては、有明海奥部の汽水環境の保全・回復と漁獲管理が必要不可欠とされています。

(サカナト編集部)

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