食用としても知られるホヤですが、中には面白い特徴を有している種がいます。
紫外線から身を守るためのユニークな仕組みだったり、動かないように見えて実は動いていたり──ホヤの仲間には意外な特徴を持つものもいるのです。
独特な紫外線対策
私たちが紫外線対策をするときは「日焼け止めを塗る」「日傘をさす」「日陰を歩く」などがありますが、海の中で動かないように見えるホヤは一体どのようにするのでしょうか。
関わってくるのが、セルロースを主成分とするホヤの皮の部分「被嚢(ひのう)」です。
マボヤ(提供:PhotoAC)透明・半透明だけど紫外線を防ぐ被嚢
被嚢は透明または半透明のものが多いですが、十分な厚みがある場合、有害な光が体内まで届きにくいようです。
また、透明や半透明であることで、敵に食べられにくいという利点もあります。
シロボヤやマボヤの仲間がこれにあたります。
石灰質の粒(骨片)を持つ
群体生のホヤの被嚢の中に石灰質の粒(骨片)を持つ種類も知られています。
骨片は光を防ぐだけでなく、被嚢の強度を高め、敵に対する防御にもなるのです。
ウスボヤ属の仲間がこれにあたります。
被嚢の中に色素を持つ
被嚢の中には様々な種類の細胞があります。
細胞の中には色素を含んでいるものもあり、その色素で光をブロックしているホヤも知られています。
光量によって被嚢の色を変える
ファルシア・ニグラ(Phallusia nigra)は明るい場所に付着したものは黒い被嚢を、暗い場所に付着したものは白く半透明な被嚢を持つ少し変わったホヤです。
日陰に付着していたものは、日向に移動すると白かった被嚢が1〜2週間で真っ黒になります。
被嚢が黒くなれば紫外線を防げそうでが、色が濃すぎると共生藻が光合成に必要な光まで遮ってしまいます。そこで藻類と共生するホヤは、透明な被嚢を保ったまま紫外線だけを吸収する仕組みを持っているのです。
正確には、共生しているシアノバクテリアが紫外線吸収物質を作り出しています。
固着しているけど歩く?
ホヤは固着性の動物ですが、チャツボボヤ(Didemnum molle)は歩くことが知られています。とは言っても、気がついていたら歩く程度です。
チャツボボヤ(提供:PhotoAC)チャツボボヤが持つ骨片は体を支えるためだけではなく、体を紫外線から守っています。まだ骨片を持っていない幼生は変態して成長し、骨片などが整ってきたら日向に移動するという研究があります。
また、深場に生息するものは骨片の密度が低く、太陽光がよく届く場所に生息するものは密度が高い、という研究もあります。
藻類と共生するチャツボボヤが日向に移動するのは、「骨片」という日傘を持っているからかもしれません。
違う視点でホヤを見よう
動かず、一見何をしているのか想像しにくいホヤですが、紫外線対策をしていたり、ゆっくりと移動していたりと、さまざまな生活を送っています。
海でホヤを見かけたときや食べる機会があったときには、この面白い生態を少し思い出してみてください。これまでとは違った視点でホヤを見ることができるかもしれません。
(サカナトライター:Sunchan)
参考文献
海に暮らす無脊椎動物のふしぎ 中野理枝:著者 / 広瀬裕一:監修