3月1日に富山湾ではホタルイカ漁が解禁されました。
富山湾は全国的に珍しくホタルイカの大群が接岸する地域で、ホタルイカの身投げはしばしばネット上でも話題になりますね。
この記事では世界的にも珍しいホタルイカの産地についてご紹介します。
ホタルイカとは
ホタルイカ Watasenia scintillans はツツイカ目ホタルイカモドキ科ホタルイカ属に属する小型の頭足類(とうそくるい)で、通常は水深200~600メートルの深海に生息。和名の由来にもなっている発光器は一部を除く体中に点在しており、威嚇やコミュニケーション、擬態などに役立っていると言われています。富山県ではコイカ、マツイカとも呼ばれるそうです。
また、この科にはホタルイカによく似たホタルイカモドキ属のホタルイカモドキ Enoploteuthis chunii という種が含まれます。ホタルイカモドキはホタルイカよりやや大きくなる種で、ホタルイカ同様に発光器を待ちますが、両種は発光器の配列などから区別することが可能です。ホタルイカモドキとホタルイカは若干分布域が異なるものの両種は同所でも見られます。
ところで、なぜホタルイカやホタルイカモドキ属する科はホタルイカ科ではなくホタルイカモドキ科なのでしょうか? 実は日本でホタルイカ、ホタルイカモドキが命名される前に海外では発光する小型のイカのグループを Enoploteuthidae と命名されていたのです。この科はホタルイカモドキ属 Enoploteuthis が模式となっていたためホタルイカモドキ科という和名が付きました。
ちなみにニセホタルイカ属という紛らわしいグループもホタルイカモドキ科に属しています。
富山県で起こるホタルイカの身投げ
通常、水深200~600メートルの深海に生息するホタルイカですが、富山県では産卵期である4~5月になると産卵のために雌のホタルイカの大群が接岸することが知られており、海中で青白く光る姿は富山県の春の風物詩となっています。この現象は「ホタルイカ群遊海面」と呼ばれ、日本のみならず世界的にも珍しく、富山湾の独特な地形が関係しているのではないかとも言われています。
なお、「ホタルイカ群遊海面」は大正11年3月8日に国の特別天然記念物に指定、昭和27年3月29日には「とやま文化遺産」に登録されました。接岸するホタルイカの中には砂浜に打ち上げられる個体が後を絶たず、「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる現象が発生します。この時期になると浜にはホタルイカをすくいに多くの人々が集まるそうです。
ホタルイカは富山名物
本州以北に生息するホタルイカですが、多産するのは日本海側といいます。特に富山湾ではホタルイカ漁が盛んです。漁の解禁は3月で、他県とは異なり定置網で漁獲されることが特徴。それ故にホタルイカが傷つきにくく、良い状態で水揚げされるそうです。
富山県を代表するホタルイカはシロエビ、ブリと共に「富山県のさかな」に選ばれています。富山湾で漁獲されるホタルイカは産卵期に漁獲されるため大きいことも特徴。新鮮で丸々としたホタルイカはボイル、干物、刺身、沖付けなどで食べられており、春の食卓を彩ります。
世界的にも珍しいホタルイカの身投げを一度は見てみたいものですね。
(サカナト編集部)