息子が磯で30センチ位のトラウツボを捕まえたことをきっかけに、ウツボを飼育し始めました。つぶらな瞳が可愛い、点々模様が美しい、鼻と口がかっこいい。その反面、ウツボ飼育は難しそう、危険ではないだろうか……という認識で連れて帰ったのですが、飼育をしてみたことで次第に魅了されていきました。
ウツボを飼育してみた意外な結果
ウツボは「海のギャング」という異名で呼ばれることがあります。獰猛、危険生物、凶暴、捕食者というイメージがあるかもしれません。鋭い歯を持ち、威嚇の際に大きな口を開けている写真もよく見られるのではないでしょうか。
ところが実際に飼育をしてみると、それとは真逆の、むしろ臆病で控えめな行動が見られました。他の魚が住む水槽内に入れてみたところ、用意した真っ暗な隠れ家に入ったきりほとんど出てくることはありません。
ウツボが同居する小魚を食べてしまうのではないかという心配は杞憂に終わり、餌を食べずに餓死してしまうのではないかという心配に変わりました。40日間ほどの間に2、3回しか餌を食べなかったのです。
生魚の切り身、イカ、エビ、アサリなどウツボが好きだと言われる餌を口の前で動かしてみたりと工夫しましたが食べない日々が続きました。その後、40日くらい経った頃に明らかな変化がありました。朝起きたら水槽内で悠々と泳いでいたのです。それと同時に餌をパクパクと食べ始めました。
ようやく環境が安全だと認識したようです。大好きなイカの切り身を何個も食べることもありました。自分の頭くらいの大きさの餌を丸呑みして咽頭顎という第二の歯を使ってゴクリと飲み込みます。
ウツボは控えめで優しい性格?
ウツボ飼育に関する情報は少ないのですが、1ヶ月くらい餌を食べなくても大丈夫という記載も見つかり、また、臆病な性格だという情報もあり我が家の個体特有の結果ではないようです。
思えば、葛西臨海水族園では1m以上もあるウツボも他の魚と同じ水槽に、ニセゴイシウツボも食べようと思えば食べられるサイズの魚と一緒に泳いでいます。不用意に近づいたり攻撃を加えたりしなければ襲ってくることはありません。
穏やかな性格を感じられたのは、水槽内で他の魚が弱ってしまい体のバランスが崩れかけていた時に、心配するかのように終始気にしている様子が見られたことです。弱っている魚を襲うこともありませんでした。
ゴンズイ玉と同居をしていた時には自らゴンズイ玉へ加わるように一緒に泳ぐ行動も見られました。環境に慣れてしまえば他の魚との距離感も近くなります。隠れ家に他の魚が入ってきても追い出すことはせず窮屈でも一緒に入りますが、隠れ家に先客がいる時は後から入っていくことはなく、控えめです。
ウツボは丈夫で飼育しやすい?
このように穏やかで控えめなウツボに感情が感じられる気がして魅了されました。「海のギャング」というイメージと実態が異なるウツボを知るとますます可愛く見えてきます。
病気に強く体は丈夫と言われています。我が家の水槽内で病気が蔓延した際に魚が全滅してしまった時にもウツボ、ヒトデ、甲殻類は生き延びたことが何度かあります。飼育にはチャレンジしやすいかもしれません。
(サカナトライター・ミドリフサあんこ)