タツノオトシゴの出産の光景をみたことはありますか。
必死に腰を振りながら出産する姿は衝撃的。しかも、その個体はオスなのです。
タツノオトシゴの求愛
繁殖期になるとタツノオトシゴのオスとメスは毎日のように出会い、求愛します。
水中をくるくると回ったり尻尾を絡ませてダンスをしたりしてコミュニケーションをとり、体の色を変化させ、オスは卵を育て、孵化させるための袋である育児嚢を膨らませてアピールをします。
求愛ののち、オスの育児嚢にメスが産卵管から卵を産みつけます。その姿がハート型のように見えることからタツノオトシゴは「愛のシンボル」と言われることもあります。
タツノオトシゴの出産
タツノオトシゴはオスが子どもを生む唯一の動物です。タツノオトシゴ最大の特徴とも言えるでしょう。
前述の通りオスは育児嚢に卵を受け取ると精子をかけて受精させます。育児嚢の中にはひだがあり卵、稚魚を優しく包むことができます。
数週間かけて卵を孵化させ、時期がくると腹部の筋肉が強力に収縮し、一斉に体外へと放出(出産)します。数ミリの稚魚は既に親と同じ体形をしており、小さなタツノオトシゴが数百匹と生まれてくるのです。ですが、そのなかで生き残れるのは0.5%以下、10匹足らずだとか。
オスは出産後はしばらく食事をしませんが、空腹時に近くに幼体がいれば食べてしまうことも。オスが出産をする頃にはメスは再び産卵の準備をしており、すぐに交尾を始めます。
タツノオトシゴ類は一夫一妻制のタイプが多いことでも知られています。出会いから出産までの過程を辿っていくと愛を感じられる神秘的な生物と言えるでしょう。
(サカナトライター:南あずま)